今にも弾けそうなその塊の先端、濡れた髪の毛の束が漂っているのが見えた時、初めてそれが人だと認識できた。
多分川の流れと岩とに何度も揉まれ打ち付けられたんだろう、ところどころ肉は裂け、衣服はすっかり剝ぎ取られていた。
うつ伏せに浮いてる。
顔を見なくて済んだ、良かった。痺れた頭にはそんな思いだけが浮かんでいた。
俺たちはもはや何も言えず、ただ息を飲んで水死体を見ていた。
とても長い時間が流れたように感じた。
非日常をもたらす異様な物体に、ようやく心が慣れてきたのか、ふと緊張がほどけた。
早く大人を呼ばなくちゃ…乾いた咽喉に唾を無理やり流し込んだ。
と同時に、
ぶるるっ、
動くはずのない、筋線維の半ば溶けた肉塊が細やかに数回、蠢いた。
ゆらゆらと水面を漂う毛髪が植わった頭部と思しきその膨らみの反対側、かつて尻であっただろう肉の割れ目から、
にゅるり…
黒く細いひも状の物体が顔を出した。
その物体はうねうねと意志を持ったようにのたくっている!
ひっ、、、
それは牛蒡くらいの太さに絡まり合った濡れた黒髪の束だった。
髪の一本一本が、剝き出しの筋組織のように収縮を繰り返す。
にゅるり、にゅるり、ずず…ずずず…
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