電気は付かないんだけど、奥のベランダに繋がる窓から光が漏れてた。
だからカーテンを開けて、もう少し明るくしようって思ったんだ。
近づいて、カーテンを開けて、その流れでふと外を見て、
そして絶句した。
見えたんだよ。窓の外に、あの道路が。
いつも夢で下から見上げていた、あの“幽霊の部屋の窓”からの景色が。
今、俺の目の前にあったんだ。
……つまり、俺が今いるこの部屋は、あの女がいつも立っていた部屋。
それに気付いた瞬間、俺は目を覚ました。
時刻は午前2時だった。
それ以来、俺は“幽霊が出るアパート”の夢を一度も見ていない。
あの時、俺が開けたふすまの向こうには、“あの女”がいたのかもしれない。
いや、いたんだろう。閉じ込められていたのを、俺が開けてしまったんだ。
“知らない街”の夢そのものは今でも時々見る。
でも、あのアパートの前を通っても──もう、あの窓には、誰もいない。
ただの、空っぽの部屋。カーテンすら動かない。どれだけ見ても、何も映っていない。
……だけどさ、逆にそれが妙に不気味なんだよ。
まるで、もうその場所にいないだけで、別のどこかに“出てきた”みたいでさ。
……君は最近、変な夢とか見てない?
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