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ヒトコワ

宵酔いちなさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

きっといたはず
短編 2025/05/15 21:55 982view

引き出しの奥から、数年前に使っていた古いスマートフォンが出てきた。電源を入れると、意外にもまだバッテリーが残っていた。懐かしさから、彼はしばらくそのスマホをいじっていた。

すると、突然通知音が鳴った。

「新しいメッセージがあります。」

不思議に思いながら開くと、見覚えのない番号からのメッセージが届いていた。

「また見つけたよ。」

彼は背筋が凍るのを感じた。なぜなら、そのメッセージは、数年前に亡くなったはずの“彼女”が使っていた口調とまったく同じだったからだ。

さらに通知が続く。

「今、君の後ろにいるよ。」

恐る恐る振り返ると、そこには誰もいなかった。しかし、スマホのカメラが勝手に起動し、シャッター音が鳴った。

画面には、彼の背後に立つ“誰か”の姿が、はっきりと映っていた。

彼はスマホを落とし、慌てて部屋の明かりをつけた。だが、部屋には誰もいない。静寂だけが、まるで何かを待っているかのように漂っていた。

スマホの画面には、再び通知が表示されていた。

「逃げても無駄だよ。ずっと見てたんだから。」

彼は恐怖に駆られ、スマホの電源を切ろうとした。しかし、電源ボタンは反応しない。画面は勝手に切り替わり、カメラが再び起動した。

今度は、ライブ映像が映し出された。

そこには、彼の部屋のドアの前に立つ“誰か”の姿が映っていた。顔は見えない。ただ、ドアノブに手をかけているのがわかる。

そして、通知がもう一つ。

「開けて。」

その瞬間、ドアノブがゆっくりと回り始めた。

彼はスマホを投げ捨て、部屋の隅に身を寄せた。だが、ドアは静かに開き、誰かが一歩、部屋の中に足を踏み入れた。

画面は真っ暗になり、最後に一言だけ表示された。

「ようやく会えたね。」

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