思わず押し入れに手をかけて、ゆっくりと開いた。
「なんだよ…これ……」
押し入れの中には誰かが引っ掻いたような傷が無数にあった。木の繊維がめくれ上がり、爪のあとが、まるで猛獣が暴れたかのように散っている。
その傷跡を見て、先程の足跡の違和感にようやく気がついた。
「……指が、多い。」
そうだ、あの足跡、指がやたら多かった。
拭いていてなぜ気が付かなかったのか。
傷を見て、指の数が7本だと気がついた。
もう二日酔いなど忘れていた。
酔っていたから、何かおかしな事をしてしまった。そう自分に無理やりいい聞かせて掃除を終わらせ、シャワーを浴びて、床に入った。
******
深夜に何かを引っ掻くような音で目が覚めた。
嫌な汗が流れるのを感じる。
その音は押し入れの方から聞こえた。
押し入れは掌ほどの隙間が開いていた。
暗い部屋の中、尖った爪の7本指が押し入れの中から襖を握っている。
隙間からは人間の顔の上半分が、襖からこちらを見ている。目は縦に2つ並んでいた。驚くほど空虚な虚ろな目。
生唾を飲み、思い出していたのは、あの日の地蔵。ふと、思ったことをこぼした
「俺…謝った、よな……?」
押し入れが開いた。
テレビの砂嵐に、男とも女とも取れないような声が混じった”音”が背後から聞こえた。
『……本当に?』
[完]
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怖すぎる…
世の中ごめんでは済まないこともあります。特に酒が入っている時は気をつけましょう。下戸より