病院に着き、医師が懸命に処置をする間も、私はIを呼び続けた。
明け方になって、ようやく電話が通じた。
「何?こんな時間に…」
「Tが…Tが危ないんだ!すぐに病院に来てくれ!」
彼女は驚愕の声を上げ、すぐに駆けつけると言った。
だが、Tはその声を聞くことはなかった。
「ご家族の方……」
医師の静かな声が、白い廊下に響いた。
「申し訳ありません。お子さんは……」
医師の言葉が続く前に、私は理解していた。息子は、もういないのだと。
Iが病院に駆けつけたとき、彼女は泣き崩れた。白い病室の床に膝をつき、声を上げて泣き続けた。その姿を見て、私は思った。
「まだ息子への愛情はあったんだな……」と。
葬儀の後、Iは一変した。
遊び歩くことはなくなり、専業主婦として家庭に尽くすようになった。毎日、きちんと食事を作り、家を掃除し、そして息子の仏壇に花を供えた。悲しみの中にも、彼女は強さを見せていた。
私も心の痛みを抱えながら、Iと共に立ち直ろうと努力した。二人で支え合うことで、少しずつ前を向くことができた。
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