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不思議体験

アイスノ人さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

足音
長編 2025/05/01 13:00 6,460view

 病院に着き、医師が懸命に処置をする間も、私はIを呼び続けた。

 明け方になって、ようやく電話が通じた。

「何?こんな時間に…」

「Tが…Tが危ないんだ!すぐに病院に来てくれ!」

 彼女は驚愕の声を上げ、すぐに駆けつけると言った。

 だが、Tはその声を聞くことはなかった。

「ご家族の方……」

 医師の静かな声が、白い廊下に響いた。

「申し訳ありません。お子さんは……」

 医師の言葉が続く前に、私は理解していた。息子は、もういないのだと。

 Iが病院に駆けつけたとき、彼女は泣き崩れた。白い病室の床に膝をつき、声を上げて泣き続けた。その姿を見て、私は思った。

「まだ息子への愛情はあったんだな……」と。

 葬儀の後、Iは一変した。

 遊び歩くことはなくなり、専業主婦として家庭に尽くすようになった。毎日、きちんと食事を作り、家を掃除し、そして息子の仏壇に花を供えた。悲しみの中にも、彼女は強さを見せていた。

 私も心の痛みを抱えながら、Iと共に立ち直ろうと努力した。二人で支え合うことで、少しずつ前を向くことができた。

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