私が中学生の頃の話。
両親は共働きで、兄弟もおらず、家に1人でいることが多かった。
その日も、1人でテレビを見ていると、固定電話が鳴った。
非通知の着信。
当時、おばあちゃんからの電話はいつも非通知だったので、何の疑いもなく受話器を取った。
「もしもし? おばあちゃん?」
……返事は、おばあちゃんではなかった。
「今、家に1人?」
低くて、知らない男の声だった。
一瞬でゾッとした。切ればよかったのに、私は動揺してこう答えてしまった。
「……誰ですか?」
「今、1人だよね?」
「だから、誰なんですか!?」
「1人でしょ、そうでしょ、1人だよね、いつも」
―
『い ま か ら い く ね。』
鳥肌がぶわっと立った。
私は受話器を投げ捨てて、急いで家中の戸締りを確認した。カーテンも全部閉めた。
リビングに戻って、ガタガタ震えていたその時、玄関が、ガチャガチャと鳴った。
「うっ……!」
ドアがゆっくり開く。
「ただいま〜」
呑気な父の声だった。
私は泣きながら事情を説明し、父がすぐに警察を呼んでくれた。母も、ほどなく帰ってきた。
結局、何も起こらなかった。
けれど今でも、非通知で電話がかかってくると、あの日の声が頭によみがえる。
……あれは、一体なんだったのだろう。
【完】
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怖ー