知り合いの中学生位の頃の話。
知り合いのМには、悪ガキのSって奴がいた。
よく大人に禁止されている場所に行ったり
墓場で遊んだり、人の家の庭荒らしたりする
様な奴だった。
そんなSがある日Мにこう言ったらしい。
「なぁ、隣町の山の中に廃村が
あるらしいんだ!行こーぜ!」
「廃村?…あー、そこ行ったら
タイムリープするとか噂の?」
「そう!行こうぜ!なんかいいもんあったら
売って遊びに使おうぜ!」
Sの言う廃村、そこは本当に昔のような
薄汚いただの廃村がある。そんなんだからか、
タイムリープできるようになる
など馬鹿馬鹿しい話は定期的に聞く。
Мもその噂が本当かは気になっていたらしく
二人で行くことにした。
当日、夕方前にチャリでそこまで足を運ぶ。
確かに虫の多い山の奥には廃村があった。
草と木しかない道をかき分けていると
段々と廃村へ通じる道が見えてきた。
「うお〜!ガチであるじゃん!」
「でもこんなとこでタイムリープとかできんの?」
「さぁ?できたら面白そうじゃん!」
草をかき分け近付くと、不意にSが
身をかがめた。
「どうした?」
「しっ!誰かいるって!」
Sの見る先には確かに誰かいた。
よく見ると、ボロボロの蔵に入ろうとする
男二人がいた。
足を骨折したのか、松葉杖をついた男と
少し大柄な男が1人。
「ちぇ、先客か?」
「何でこんなとこに大人が2人いんだよ…」
見ていると、松葉杖の男が、もう1人の男に
押されて蔵に入って行った。
押した男は入ろうとせず、何か言っていた。
おそらくジェスチャー的に見ると
「ここから動くな」的な事を言ってたと思う。
そのまま男は蔵に入った男を置いていって
帰ってしまった。
残された男は松葉杖で蔵の奥へと入って行った
Sはその蔵にこっそり近付いた。
「ちょ、どうすんだよ?
なんかやべー事してたら…」
「大丈夫大丈夫…!バレたら逃げたらいいだろ?」
まぁこんなとこでSを止めてもあいつは
何も言うことを聞かない。好きに前を歩かせる。
「なぁ見ろよ、これ」
Sが指差す所には、蔵の入り口の横にあった
大きな重そうな板。
「これって蔵の扉じゃないのか?」
「ドアノブとか何もねぇから違うだろ」
「ふーん…」
Sがなにかニヤニヤしている
「何笑ってんだよ」
「この板でさぁ、入り口閉じてやろうぜ!w」
「…はぁ?んなことしたら中の人
死んじまうだろ…!」
「大丈夫だろw勝手に出てくるよw」
Мの話も聞かず、Sはその板を持ち上げた。
Sは残された松葉杖の男に聞こえるように叫んだ
「この扉、閉めちゃいまーす!!!w」
そのままSは板で入り口を封じてしまった。
「ぎゃはははは!!どーなるかな!?w」
「うわー…おれしらねーからな」
「明日また様子見に行こうぜ!」
「わかったよ…」
蔵の周りにも廃村があったが、
もう暗かったので帰ることに。
そして次の日。学校へ行くと、
いつもの騒がしいSがいると思った
「あれ?今日Sいねーの?」
「おぉМ!おはよ、今日あいつ風邪だってよ」
「あー、そうなんだ」
「確かインフルとか言ってたよ」
「インフル!?俺昨日遊んだけど
移ってねぇよな…」
インフルのおかげか、インフルのせいでなのか、
蔵には行かなかった。
そして数日が経過し、とうとうSが学校に来た
「おー、S、大丈夫だった?」
「大丈夫!ゲームしまくってたわ〜
あ、てか蔵行けなかったな…
今日空いてる?行こーぜ!」
覚えてたか…。断る隙ももらえず、
Sと行くことになった。
一度家に帰り荷物を置くと
ニュースを見ていた父に話しかけられた。
「おいМ、今日も遊びに行くのか?」
「ん?あ、うん」
「今日はだめだ、家にいなさい」
「はぁ〜?なんで?」
「隣町の山の中で死体が見つかったんだ」
心臓が大きく鼓動した。
「ニュースで物凄く取り上げられてるぞ
殺人事件かもしれないから今日はやめなさい」
「わ、わかったよ、Sに遊びの断りだけ
入れに行ってくる」
「わかった、気をつけなさい」
確かにテレビからは、
「〇〇県〇〇の山の中で死体が〜…」と
聞こえていた。
Sに蔵で死体が出た事を伝え、行くのをやめる
と伝えた。
Sはびっくりしていたが、焦りまではしてなかった
未成年だから罪にならないと思っていたのか…。
そこから2人は少し疎遠になった
中学、高校、大学を卒業し、
Мはそこで今も暮らしている
風の噂だがSは都会に出たらしい、
だが借金を作り、追われる日々だとか…。
そんなある日、夕方前、一本の電話が来た。
「はい、もしもし?」
「М!俺だ!Sだよ!」
「S!?久しぶりだな、どうしたんだよ」
「今さ、あん時の蔵にいるんだよ!」
「え、蔵?お前今都会にいるんじゃねぇのか?」
「違うんだよ!借金取りに捕まってよ…!
蔵に閉じ込められたんだっ!!」
突然の状況だが俺はとにかく
状態を整理しようとする
「なんでも良いから助けてくれよ…!
俺足折れてるからよ、逃げられねぇし…!」
「わ、わかった、今行くから!」
「本当か!?よかった…」
そう安堵するSの声、だが電話の奥からは、
若い子どもの声が楽しそうに響いていた。
「S?ほかにだれかいるのか?」
「え…?いや、いねぇよ」
そう答えた瞬間だった。
「この扉、閉めちゃいまーす!!!w」
「え…、」
大きな物が蔵にぶつかる音がする
そのままSと電話は途絶えてしまった。
あの声は、あの時の声は、
間違いなく中学生の時のSだ。
中学生のМは、そのSの横にいて
入り口をふさぐSを見ていたんだ。
もしも、蔵がタイムリープできるのならば
過去のSは、入り口を塞いだとき
現代のSを、殺してしまったのかもしれない。
それからМは蔵には行かなかった。
テレビのニュースも見たくないらしい。
だって、隣にいたМも、共犯かもしれないから。
こわ