今から40年も前の話になる。石川県のとある山で山菜採りに行った時の事。この日は小雨が降っていたが、運良くウドやらゼンマイやらが大量に生えている場所を見つけ、色々収穫した後、帰路で山道を下っている途中に割れ目のある大きな岩石を見つけた。割れ目をよく見ると青い蛇が隠れているのが見える。模様がない紺色の小さい蛇で、物珍しく観察していると蛇が隙間から這い出てきた。この時、何故か無性にそいつに触りたくなり、噛まれるとか恐れもなしに掴んでしまった。すると、蛇は霧のように消えてしまい、不可思議な出来事に困惑していると急に雨風が激しくなり、雷もけたたましく鳴り出した。一目散で麓まで下り、遭難せずに無事に帰宅した。
後日、その蛇について調べていると、そいつは梅雨蛇(つゆへび)という妖怪だそうで普段は岩の穴に潜んでいるが毎年梅雨の時期にだけ、1~2回の割合で岩肌に現れるそうだ。触ると暴風雨が発生するという伝承も残されている。
あの出来事から4年後の話になるが、また変なものを見てしまった。旅先の岩手県の田舎にある畦道を歩いていたところ、遠くの山から大きな何かが飛んできた。鷲だった。それも身の丈は五メートル位で翼長は10メートル以上もあり、両足には必死にもがく鹿と熊らしき動物を掴んでいる。図体の割に飛ぶのが速く、一瞬で別の山へ飛び去ってしまった。呆気に取られていると偶然通り掛かった爺さんに声を掛けられた。何やら爺さんもあの鷲を見たらしく、心配して駆け寄ってくれたという。そして、鷲について知っているらしく色々教えてくれた。あれは鷲駿(ぐわい)という妖怪で周辺住人の間で口承で伝わっていたそうだが、時代の流れと共に信じる者も少なくなり、忘れられつつあるのだと。爺さん曰く少なくとも江戸時代から伝承があり、凶暴な性格で鹿や猪などの野生動物を餌として攫って巣にいる雛に食べさせるとされ、雛の大きさはニワトリやウズラ位だと伝わっている。人里にも現れ、家畜の牛馬や果ては人間まで攫って喰らったという逸話がある。岩手の旧家羽縄家に伝わる鮭の大助の話に出てくる大鷲は鷲駿だと言う人もいたという。
























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