「……っ」
泣きそうだった。
でも、彼女の最後の願いを叶えなきゃいけない気がした。
だから、無理やり口角を上げる。
「……仕方ねぇな。」
「うん。」
彼女も笑う。
「ありがとう。大好きだったよ。」
その言葉とともに、彼女はふわりと消えた。
——次の瞬間、電車のドアが開く。
静まり返った車内に、田中だけが取り残されていた。
「……バカ。」
もう返事はない。
電車は、何事もなかったように次の駅へと向かって走り出した。
***
それから、終電に乗っても彼女の姿を見ることはなかった。
けれど——
「……お前の分まで、楽しく生きるよ。」
いつもの座席に座りながら、田中は静かに呟いた。
窓の外を流れる景色の中、ふと、彼女の笑顔が見えた気がした。
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コワすぎ!!
怖いっていうか、うんお幸せに
泣きそう
泣けるねー