「私ね、この電車に縛られてたんだと思う。でも、田中とこうして話してるうちに、いつの間にかすごく楽しくなって……」
「……」
「気づいたら、怖くなくなってた。寂しくもなくなってた。」
彼女は、ずっと孤独だった。
電車の中で何年も、何十年も、誰にも気づかれず、ただ存在し続けていた。
でも——
「田中が私を見つけてくれたから、もう大丈夫になったんだと思う。」
「……俺は、別に何もしてない。」
「そんなことないよ。」
彼女は優しく微笑む。
「田中が話してくれたから、忘れてた“生きてた頃の私”を思い出せたんだ。楽しかったことも、好きだったことも。……だから、もう行かなくちゃ。」
「待てよ。」
田中は思わず彼女の手を掴もうとする。
——でも、指は彼女の体をすり抜けた。
「……っ」
「バカだなぁ。幽霊なんだから、触れるわけないじゃん。」
彼女はくすっと笑う。でも、その声は少し震えていた。
田中は唇を噛む。
この2年間、毎日話して、毎日一緒に過ごしてきた。
もう、幽霊だとか生きてるとか、関係なかった。ただ——
「……いなくなるなんて、勝手すぎるだろ。」
「……ごめんね。」
彼女の体が、だんだんと薄くなっていく。
「田中。」
「……なんだよ。」
「最後に、お願いがあるんだ。」
「……言ってみろよ。」
「——笑って、見送って。」
田中は驚いたように目を見開く。
「私、最後は泣き顔じゃなくて、笑った田中を見ていたい。」
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泣きそう
泣けるねー