市松人形が、先ほどよりも大きくなっていました。
私の体の半分くらいの大きさでした。
私は大声を出しながら、泣きながら、母を呼び、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と何かに謝りながら、走っていました。
途中、靴が脱げてもお構いなしに、靴下のまま走りました。
また同じ場所に戻ってきてしまいました。
また走る、また戻る。
少し大きくなった人形と笑い声。
また走る、また戻る。
さらに大きくなった人形と笑い声。
また走る、また戻る。
そこには、脱げた靴と、さらに大きくなった市松人形。
もう、私と同じくらいの大きさでした。
笑い声が少しずつ低く、ゆっくりになって聞こえます。
体力の限界でした。
もうダメだと思いました。
もう帰れなくなっちゃった。
もう父や母に会えないんだと思い、とても悲しくなり、
先ほどまでの「怒られてしまう恐怖」や「人形に対する恐怖」とは違う涙が出てきました。
私は、人形を睨んでいたと思います。
その人形は、ニヤニヤと笑っていたように感じました。
悲しい気持ちと同時に、その人形が憎く感じました。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 27票





















※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。