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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

水族館
長編 2025/01/19 00:38 1,155view
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それからしばらく経ち、5年生に進級してまもなくのこと、水族館久々に行くことになりました。
私は密かに、水族館に行ったら今日はあの女性トレーナーさんの観察をしようと考えていました。
館内にいる係員さん全員をチェックしながら進んで行きましたが今日はどうやらお休みのようでした。諦めて帰宅しようと水族館の出口に向かっていると出入り口前であの女性トレーナーさんが立って1人1人にお辞儀していました。
出て行く人達の顔をチェックしているかのように顔を覗き込んで。
その光景を見た私は咄嗟にヤバいと思い、妹に、「トレーナーさん方を見ないように下を向いて目を閉じて出口を出よう。」と耳打ちしました。
なぜ、そんなことをするのか不思議がる妹の手を引き、出入り口付近に来たら下を向いて目を閉じて歩いていました。
トレーナーさんの前を達と「ありがとうございました。」と小さな声が聞こえました。
私は少しだけ薄目にすると、目を見開いて瞬きせずこちらの顔を覗き込んでいる女性がいました。グッと目を閉じて、走って出口を出ました。振り返ると女性トレーナーはこちらを見ながらまた手を振っていました。
帰りの車中で妹に、

「出る時、下向いて、目を閉じてたか?」と聞きました。
「ちょっとだけ目を開いたら、女の人の顔が目の前にあって、二コーっと笑いながら「またね」って言ってた。そしたらお兄ちゃんが走り出したの。」
あの女性トレーナーは人間ではない。とさすがに私は思いました。
妹には怖がらせないように何も言いませんでした。
もしかしたら、今まで俺と妹にしか見えてなかったのかと思うと恐ろしく思えてきました。

それからというもの、水族館に行くことはなくなりました。
水族館に行こうかと言われても私が頑なに拒んだからです。

それから数十年が経ち、私も妹もそれぞれ家庭を持ち生活していました。
正月に帰省した時に、

「久々に水族館行こうよ!」と妹が自分の子供や私の子供達に声をかけていました。
子供達は喜んで大はしゃぎ。妹の旦那さんや私の妻も賛成し大人数で行くことに。
私は「申し訳ないけど、家で待ってる。」と伝え、私の両親も全員出かけて行きました。
1人でくつろいでいるとLINEが入りたくさんの写真や動画が送られてきました。
楽しそうなみんなの写真を一通り見終わって、最後に動画を見ていたら思わず絶句してしまいました。
イルカのショーの動画の中に昔見た女性トレーナーが映り込んでいたからです。
見た目は当時と変わらず、ステージの端の方に立ちショーの様子を見ていました。
ショーが終わり、観客席に向かってトレーナーさんとイルカ達が手を振ってる様子を撮っている妹の方に向かって、あの女性トレーナーさんはスマホ越しにこちらに笑顔で「またね。」と言っていました。

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