消えた友達と残された家
投稿者:黒音リト (1)
私の友達が結婚してからおかしくなりました。
友達は現在行方不明です。
何故行方不明になったのかはわかりませんが、彼女から聞いた話と私が見たものを、ここに文章で残そうと思います。
友達の名前は仮にアヤとしておきます。
アヤと私は短大で知り合い、卒業後も連絡を取り合っていました。
アヤは短大を卒業してすぐに、街コンで知り合った男性と付き合い始めました。
そして25歳になった時にその男性と結婚したのです。
結婚したばかりの頃はこれまで通り頻繁に連絡を取り合っていましたが、1年もすると連絡の頻度が減り、こちらからLINEを送っても既読無視されることが増えました。
結婚すれば生活も変わるし忙しくもなります。
私はアヤに連絡するのをやめました。
それから2年ほど経った頃に、急にアヤから電話が来ました。
切羽詰まったような、どこか疲れたような声で「うちに来てほしい。話を聞いてほしい」と言われました。
アヤは旦那さんの実家で義母と同居していたそうです。
距離もあるし少し悩みましたが、アヤの声がとにかく弱々しかったので会いに行くことに決めました。
アヤの家は埼玉の端のほうにありました。
小さな平家で、家の中は開けていない段ボール箱などもあり少し雑然としていました。
久々に会ったアヤはガリガリに痩せ、まだ20代後半なのに40代に見えるくらい老けてしまっていました。
「旦那は今中国に出張に行ってて、あと2年は帰ってこないの」
寂しそうにそう言うアヤに、昔の明るかった頃の面影はありません。
「旦那さんのお母さんは?」
と聞くと
「だいぶ認知症が酷くなっちゃって、今は施設にいる」
と返ってきました。
ここからはアヤから聞いた話です。
正直どこまで本当の話なのかはわかりません。
義母は優しい人だったそうですが、アヤが一緒に暮らすようになってから少しずつおかしくなっていったそうです。
具体的に言うと、縁側を指差して何かに怯えたような声を出したり、誰もいないのに「帰ってきた、帰ってきた」と言って玄関を開けに行ったり、トイレのドアを開けて「みなみ?みなみなの?」と言ったりしていたそうです。
“みなみ”というのは、旦那さんのお姉さんの名前だそうです。
しかしアヤはみなみさんに会ったことがありません。みなみさんはアヤが旦那さんと知り合う随分前に亡くなっているそうです。
アヤは、結婚してからはじめて仏壇に飾られた写真を見て、みなみさんの存在を知ったそうです。
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