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阿KUZOOさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

雨傘番組
短編 2025/01/16 00:34 55view

皆様は雨傘番組という概念を知っているだろうか?
野球の生中継をテレビでやるが、その際雨が降ると試合が中止になってしまう。そんな時に代わりに流されていた番組のことを雨傘番組と言う。今はドーム球場が増えたため雨傘番組の数は減ったが、これはそんな番組が多くやってた頃の話である。

私の上司のSさんが親戚の叔父さん(以下Tさん)から聞いた話である。Tさんが子供の頃、よくテレビで野球の生中継をやっていたが、Tさんはそれが嫌いだった。なぜならよく生中継で好きな番組が延期または放送中止になることが多かったからだ。

ある時Tさんが暇でテレビのチャンネルをパラパラ変えていた時のこと、とあるチャンネルではこの後野球の生中継が放送される時間だった。Tさんはうんざりしながらテレビを見ると野球は放送されず、青い画面に文字が表示されていた。
「本日は天候不良のため、野球の生中継は中止して別の番組を放送いたします。」
Tさんは嫌いな野球が中止になってラッキーと思ったがすぐにある疑問が浮かんだ。
「今日の朝は天気予報でどこも快晴だと言っていたよな?」
ただ当時は今と比べて天気予報の当たり外れの差が大きかった時代である。Tさんは天気予報がまた外れたんだなと思い直し、雨傘番組を観ることにした。

「あの時アレを観なければよかったなぁ」

Tさんは後にSさんにそう語った。

タイトルは『〇〇の不思議な旅』みたいなタイトルだったと言う。アニメ番組で主人公の少年と仲間たちが冒険するというものだった。声優は素人が演じたのか棒読みだったがそれがどうでもよくなるほど奇妙で不気味な特徴があった。登場キャラは全員目だけ実写だったのだ。

全体的に動きがなく紙芝居みたいだったが、実写の目だけ動く、そんなアニメだったと言う。

当時テレビでは冒険王クラッチというアニメが放送されていた。このアニメはシンクロ・ヴォックスという口だけ実写合成で動くという手法が使われたアニメだったが、今Tさんが見てるアニメは口ではなく目が実写であった。

Tさんは不気味に思いながらもなぜかこの番組を観るのをやめられなかった。しかしTさんの父がこの番組にかじりついて観ている様子を見てすぐにテレビを消した。そして二度とその番組は観るなと言った。

「何かに洗脳されていたのかもしれないね…でもあそこで止められたからこの程度で済んだ。」
Tさんは後にSさんにそう言った。

次の日学校でTさんは同級生たちに昨日観た番組の話をした。しかし同級生たちの意見は食い違った。
ほとんどの同級生たちは言った。昨日は通常通り野球の生中継がやっていたと。一部同じような番組を観ていた同級生もいたが内容が微妙に食い違っていた。

人によって実写だった部分が耳だったり鼻だったりした。また中には実写部分は顔面部分ではなく両腕だったり両足だったりした人もいたと言う。
観る人によって内容が異なるということがあるのだろうか。また、鼻が実写と言うのも奇妙な話だ。動きがほぼないであろう耳や鼻を実写化する意味が感じ取れない。

当時Tさん達は変な番組があったんだなあと言うことで話題は落ち着いた。しかしそれからしばらく経った頃、事態が変わる。Tさんは事故で片目を怪我し失明しかけた。その時はそのアニメを観たことを忘れていた。しかし同窓会で集まった際にある事実を知った。
当時アニメを観た人を見た人たち全員に身体関係で不幸があったのだ。耳が不自由になった人もいれば鼻骨を骨折した人もいた。また同窓会にでられない人が2人いたが1人は両腕、もう1人は両足を事故で失った人と言う。その時Tさんは思い出した。損傷した部位がどれも当時観たあの不気味なアニメで実写だった部位ではないかと。
Tさんは負傷を負った人たちにそのことを言ったが彼らの反応は全部同じだった。
「そんなアニメ観たことがないし知らない。」

「この兄のこと知っている人誰もいないんだよね。
でも幻覚だとは思えないな。」
そうSさんに喋った。ネットでその奇妙なアニメを調べたがどこにもその情報は載っていなかった。

あれは一体何だったのだろうか。

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