そうして霧島は黒いモヤとなって霧散してしまった。
その霧散した空間からコロコロっと床に何かが落ちた音がした。
霧島に巻きついていた鎖は縛る対象を失うとジャラジャラと音を立てながらまるで意志を持っているかのように鎖の腕へと戻っていく。
彼女が変人として学校に知られ、その変人と呼ばれる原因ともなっている腕の鎖。
その鎖を指揮棒を振るう指揮者のように片手で自由自在に操る彼女。
そんな摩訶不思議な光景は俺の今までの人生では触れることの無かった輝きを放っていた。
俺はただただ見惚れていた。
窓から差し込む月光に照らされる彼女の横顔もまた俺にとって一生忘れる事の出来ない一枚絵となったのだった。
「ちょっと……何をぼーっとしているの」
ただただ見惚れていた俺を見下しながら鎖は詰問する。
「助けて貰ったんだから……なにか言うことがあるんじゃないかしら」
「あ、あの……えと……ありがとうございました……この恩は……忘れません」
「当たり前よ……死ぬ気で返しなさい」
助けられた命を恩を返すためにすり減せと目の前の女は言う、なんともおかしな話だと俺は少し笑った。
「さて、あなたは命も助かったんだし、ここを片付けてさっさと帰りなさい」
鎖はそう言うと「私は少し寄るところがあるから」と言って教室を出ようとした。
「ちょ、どこ行くんだ?」
「あー、あなたを助けるついでに、借りっぱなしにしていた本を図書室へ返そうと思って」
手元には図書室の貸出シールが貼られた本が2冊ほど握られている。

























えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?