庭師の一族
投稿者:ビックリさせんなよ… (1)
今から150年ほど前、江戸時代の終わりの頃の事であります、ある城下町の真ん中に、庭師の一家(以後K家と呼びます)が住んでおりました。K家の人間は代々、お殿様のお抱えの庭師でしたから、それはなかなか立派な御屋敷を構えておりまして、街の人々からは日本一の美しさなどとも言われていました。
完璧に見えたK家でしたが、時代の流れには逆らえません。大政奉還によって政権が幕府から明治新政府に移り、その後新政府は廃藩置県を断行しました。大名ではなく政府の地方官が土地を治めるようになったのです。生活のほとんどを殿様に頼っていたK家にとってそれは大変な事であります。K家の生活はみるみるうちに困窮し、あれほど美しかった御屋敷もどこか寂しく感じられました。周りには洋風の建物がぽんぽんと建ち、庭師はもう日本に必要ないと言っているかのようでありました。
当時、K家の家長であった男には三人の息子がおりました。長男と次男は共に快活で、まったく手のかからない子供だったのですが、三男はぜんぜん違いました。確かに頭は良く、庭師としての腕前もなかなかのものでしたが、何かにつけては屁理屈をこねて悪さをするのです。父親や兄たちに何度叱られても、果たして三男の天邪鬼な性格が変わる事はありませんでした。
生活がますます苦しくなる中ある日、男は決心し、息子たちを目の前に座らせて、こう言ったのです。
「我が一族は当然、日本一の庭師の家系である。しかし悲しいかな、庭師というだけで生活するというのは今となっては不可能になってしまった。何もいけないのはお前たちではない。だからお前たち三人には、庭師ではなくそれぞれ別の道を進んで欲しいのだ。まず長男よ、お前は医者の才能がある。医学を学びなさい。そして次男よ、お前は算術の才能がある。数学を学びなさい。最後に三男よ、ああ、私はお前がどうしたいのかまったく分からない。口がよく回るのだから、詐欺師にでも何でもなりなさい。」
三人の息子たちは俯いたままでしたが、暫くしておもむろに長男が立ち上がり、ここら辺で一番の医者のところへと向かいました。続いて次男も立ち上がり、算術書を買うために大通りを下って行きました。しかし三男だけは、俯いたまま動きません。小一時間過ぎて、三男は父親にこう言いました。
「お父様。確かにおいらは一体に言う事を聞かない、どうしようもない息子です。飯ばかり食う、身の程知らずな息子です。お兄様方と比べても出来の悪いのは分かっとります。でもおいらは、庭師というものが好きなんです。誇りがあるんです。実際、植物のことなら他の誰よりたくさん知っとります、それから土だとか石だとか。お兄様が継がぬのなら、どうかおいらにこの家を継がさせて下さい。」
これに対して、父親はこう返しました。
「無理だ。」
三男は言い返しました。
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