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おはぎさんによるにまつわる怖い話の投稿です

大正トンネル(仮称)
短編 2024/10/09 15:09 427view

 私が小学生の頃でした。兄とその友人が夏休みの自由研究をするということで、私もついていきました。研究内容は大正トンネル(仮称)の構造と歴史の調査です。大正トンネルというのは、舗装されていない山道を進んだ先にあるレンガ造りのトンネルです。3mくらいの幅しかなく、車はおろか人間もめったに通らない小さなものです。兄がこのトンネルを研究対象に選んだのは、小学生の間で心霊スポットとして知られていたからです。このトンネルを建設する際、何人もの男性が働いていたそうです。古いトンネルですから全部手作業で掘り進め、レンガで固めていたようです。そんな作業中、事故が起こったとかで何人かの作業員がなくなり、その霊が今でも現れるというのが、大正トンネルの噂でした。

 15時ごろ、私たちは母親の運転でトンネルに向かいました。近づくにつれて道は荒くなり、草が茂っていきます。大体20分かけて着いたトンネルは、薄暗くてジメジメとした気味の悪いものでした。早いとこ立ち去りたかった私たちは早速調査を始めました。兄と友人が計測担当で、私が記録用の写真担当でした。まず、兄と友人がトンネルの幅をメジャーで測り、私が親のデジカメで撮影をする。次に、レンガの大きさを測り、私が撮影する。そして最後に、トンネルの長さを測ることになりました。小さなトンネルとは言いましたが、100mくらいの長さはありそうなトンネルです。2m地点を記録して、そこからさらに2mを測り、そこを記録して、さらに2mを測り……。何度も何度もメジャーをずらすようにして、時間をかけて計測しました。その間も人が通ることはなく、「どんだけ寂れてんだよ」と苦笑した覚えがあります。
 
 ピチャピチャと水の滴る音が不気味なくらいで、恐ろしいことは起きず計測が完了しました。最後に引きの画角からトンネルを撮影し、私たちは帰りました。家に帰ると兄は調査結果をまとめ、私は写真を見返していました。初めて触るデジカメが嬉しくて何枚も撮っていました。トンネルの幅を計測している写真、レンガの写真、長さを計測している写真、そしてトンネル全体が写った写真。薄暗い場所ですから、うっそうと茂る草木の中に、トンネルの真っ黒い穴がぽっかり開いているような、そんな写真でした。日あたりを考えれば自然な写真なのですが、不審な箇所が一つだけありました。トンネルのなかに白い人影があったのです。大きさからして、子供と大人のシルエット。なぜか私は子連れの母親だと感じました。「ねえ、兄ちゃん見て!写ってる!!」と興奮と焦り交じりの私を兄は冷ややかに見ていましたが、写真を見ると「まじじゃん!本当にいるんだな」と大興奮。えらいもんを撮ってしまったような気持と、噂を確かめた喜びがありました。
 
 その後、兄は図書館で資料をあさり、自由研究をまとめたようです。これといって面白い話もなく、夏休みは過ぎました。兄が怪談話をどうまとめたのか、私は知りません。兄はわりとドライな人ですから、それ以降大正トンネルの話をすることはありませんでした。とはいえまあ、私は後なって少しだけ引っかかたというか、気になったことがあるんですよね。怪談話では作業中の男性が亡くなって、霊になったということだったのに、私が撮影したのは恐らく子連れの母親。私はいったい、何を撮ってしまったのでしょうね。もしくは、あのトンネルで何があったのでしょうか。

これが私の経験した不思議な話です。

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