中部地方富山県立山町「白比丘尼のご神木」
投稿者:花音 (26)
立町町の下田にある、常願寺川のほとりに大きな杉の木はご神木として植えられている。
高さ約二四メートル、幹の周りは約六・七メートル、樹齢は約三五〇年ほどだそうだ。
実はこの木、不老不死伝説のある「白比丘尼」が植えたものだと伝えられている。
今から八〇〇年ほど前、まだ村だったこの土地のはずれにいつも間にか大きな屋敷ができていた。
もちろん誰ひとり知るものはいない。
その屋敷には老婆はたった一人で住んでいた。
「誰がいつ、こんな屋敷を建てたんだろう?」
と、村人が噂するようになったころ、村人全員が老婆に招かれ、屋敷で一晩もてなされることになった。
宴は豪華で、実に楽しいものだった。
しかし、村人は家に帰ってみたら、なんと一晩どころか一年も月日が経っているではないか。
村人はみな、老婆から「エイ」のような魚の切り身をおみやげとして持たされていたが、
気味が悪くなり、口にせずに捨ててしまった。
しかし、ただ一人、ある娘が食べてしまった。
それ以来、娘は老けなくなってしまったのだという。
最初のうちは、うらやましがられたにちがいない。
しかし、何度結婚しても、夫のほうが先に年をとり、老いて死んでしまう。
娘は「白比丘尼」という名前の尼になり、村を去ったという。
この白比丘尼が植えたのが、先に紹介したご神木だ。
他にも白比丘尼が植えた杉は、街のあちこちに残されている。
北陸地方には、このような「不老不死」にまつわる伝説が実に多い。
もっとも有名なのが、福井県小浜市の「八百比丘尼」伝説だろう。
こちらは、高橋権太夫という名の長者が、見たことないような島で、
住民から謎の魚の身をもらう。
奇妙に思いながらも、持ち帰り、台所に置いていたら、娘がそれに気がつき、
あまりの美味しさにすべて食べてしまった。
その後、娘はまったく年をとらなくなり、八〇〇歳まで生きたという。
他にも、新潟県の佐渡島や石川県の羽咋郡富来に同様の伝説が残されている。
この謎の魚の身だが、「人魚の肉ではないか」と言われている。
この時代、このエリアの日本海では、「人魚」が生息していたということなのだろうか。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。