Dear my ”C”
投稿者:なさ (1)
小学生の夏、夜中になると僕は決まって学校と家の間にある大きな山に自転車を走らせ通っていた。
そこは鬱蒼とした森林で蛇なども出ることから立ち入り禁止となっていたが冒険心溢れる子供にはただの1枚の板に過ぎない。
転ばぬよう足元を見ながらうっすらと見える獣道を抜けるとそこだけ森の天井に穴が開き降り注ぐような月明かりが照らされていた。
そしてそのスポットライトを独占するようにあいつが居た。
あいつの名前は千葉、毎回僕より先に来て横になりこの自然を満喫してる。
「また来るの負けたー!」
別に勝負してる訳では無いが毎回先越されるとなんだか悔しいものだ。
それに対して千葉はお腹があまり空かないからその分早くここに来てるらしい。
今度はお母さんに言って晩御飯を食べずにここに来ようかな…
それはそうと
「よっこいしょー」
そうして僕も横になった、子供ながらにおじさん臭いなーと思ったけど出てしまったものはしょうがない。
夏休みの3日目、この森林を探検しに来たら夜中になりさまよい歩いてるところを横になってる千葉と出会った。
それからはいつもこうして千葉と2人で他愛もない話をしたり何も言わず自然を満喫する日々が夏休み中ずっと続いてる。
ある時は好きな子の話をして、ある時は下ネタを話して、ある時は将来について話して、そして穴の空いた満天の星空を見上げ
でも今日で夏休みが終わり明日からつまらない学校が始まる。
「やだなー明日なんて来て欲しくないなー」
そういうと千葉が不思議そうな反応をしたように見える。
「ねぇ、これ話してもバカにしない?友達のままでいてくれる?」
千葉はもちろんと言わんばかりの無言の肯定をする。
「僕さ…学校で友達がいないんだ、うぅん、虐められてるとかそういうのじゃないんだけどずっとひとりでお話しちゃうんだ、だから誰も友達になってくれない、寂しい、学校に行きたくない。千葉と一緒にまだいたい。」
そういうと静かな時間が流れた、ずっと静かではあったがより一層静かさを感じた。
横を見ると顔が見えないほどブカブカでフードの着いた茶色のパーカーを来た千葉が横になってる。
こっそり見てたことに気付いたのか千葉が自分の家庭環境について教えてくれた。
家ではいつも両親が怒鳴りあっててまともに会話できない、そしてまともにご飯も食べられてない。
だからこうしてここで1人時間を潰していると。
…そんなことは一切知らなかった、そんなに辛い目にあっていたなんてこれっぽっちも思わなかった。
だから千葉はずっとここで横になって時間を潰していたのだ。
全てが頭の中で繋がった瞬間僕は体を起こし憤りと悲しさに包まれ頭から言葉がポロポロと零れていた。
「なんでいってくれなかったの!?なんでそんな辛いことをひとりで、たった一人で抱えてるの!なんで!話してくれたら一緒にご飯食べよって!言えたのに…」
あまりの辛さに泣き出してしまった、そんな様子を横に千葉はいつもと変わらず静かに寝そべっている。
まるで他人事のように素っ気ない反応だ。
ただ静かに時間が流れるのみ。
「僕決めた、僕頑張って学校に行く、学校に行って沢山勉強して千葉みたいな子がいない世の中を作る、辛い子が居ない世の中を作る。僕頑張るよ」
…相変わらず千葉は口数が少ない、隣で僕がこんな反応をしてるんだから何かリアクションぐらいあってもいいだろうに…
でも急に態度を変えられるよりは自然体でいてくれた方が気持ち的には楽だ。
そんな大事な将来の夢を掲げたところでふと僕は気になった。
千葉の顔を見たことがないなと。
もしかしたらこんなことを突然言われてびっくりしてるかもしれないし実は嬉し涙を流してるかもしれない、見たことの無い千葉の初めての顔はどんな表情をしてるのか悪戯心が目覚めた。
そして静かに忍び寄りフードを取った次の瞬間
作者です。
閲覧いただき誠にありがとうございました。
こちらDear my cというタイトルですが、このCをcorpseと捉えてもう一度読んでいただければ幸いです。
色々納得出来るところがあると思います👍🏻 ̖́-︎