崩れる霊
投稿者:実は怪廊 (1)
崩れる霊
今から書くのは俺が物心ついた時から視てきた霊の話。
俺自身、霊感が強いわけではなかったし、偶然視てきたものをありのままに書くから、脈絡もなければオチもなく、文才もない。それでもよければ読んでいってくれ。
当時の家族構成は俺含めて両親の三人家族。
子供の頃の俺は超がつくほどの怖がりで、夜になったら何をするにも親についてきてもらわないと怖くて怖くてって感じの子だった。
夜中に目が覚めても、怖いから一人でトイレに行けず、かと言って両親を起こそうにも起きてくれない。その時は決まっておねしょをして親に怒られていた。
そんな俺が生まれて初めて霊を見たのは、怖がりを克服するべく、夜中に初めて一人でトイレに行った時。
いつもの尿意で夜中に目を覚ました当時の俺は、両親を揺り起こそうとするでもなく、妙に冴えた頭で「今日は一人でトイレ行ってみよう」と立ち上がる。
電気のスイッチには手が届かない為、真っ暗な部屋を壁伝いに歩き、襖を開けたらそれがいた。
初めての霊とのエンカウント。にた〜っと笑って俺を見下ろす白い服をきた女の霊。その時の俺は何故か襖を開けてトイレがある方向を見るでなく、女がそこにいるのを知っていたかのように上を向きながら襖を開けていた。
それを見た俺は怖いとかじゃなく、何で?誰?何でいんの?ってなってた。ってかそいつに向かって言ってた。当時の年齢じゃ霊がわからないんだよね。だって見た目は人だし、俺が当時怖がってたのって日本昔話とかに出てくる鬼みたいな存在とか暗い所とかだし。
でも今思えばコレって霊に対してはNGなアクションだったんだと思う。よく言うじゃん、霊は自分が視える人間に出会うと憑いてしまうって。
案の定、俺はそれからその女を度々視ることになる。そう、二十年近くにも渡って。
初めてのエンカウントから、その霊はずっと家にいた。
当時は町営のアパートに住んでいて、狭い部屋だったから、常に目が届くところにいた。キッチンや寝室、トイレの前だろうが、どこにでも出た。
でもずっと視え続けるわけでもないし、視界の端で視えるくらい。怖がりのわりに当時の俺は、ソレが視えることに恐怖することはなかった。
でも初めて顔を見た日以降、今日に至るまで一度も女の顔を見ていない。それが当時の俺には不思議だった。
女の霊が時折り視える毎日が過ぎ、俺が小学生になるのを節目に、両親が祖父母の家の隣に家を建てることになった。
元々そこは祖父が家を建てる前に住んでいた長屋で、当時は倉庫みたいに扱われていた所だった。
家を建てるに当たり、長屋を取り壊すから整理するってことで、俺は宝探し感覚で初めてその長屋に入ったんだ。
長屋の玄関に足を踏み入れた途端、いつも自宅で視ていた女の霊が、長屋のキッチンの所に浮いている映像が頭に入ってきた。
まだ長屋の中を見たことない俺だったが、自宅以外で初めてその女を視たことが気味悪く、長屋に入るのはやめて祖父母の家でテレビ見てた。
それからは特に何かあるでなく、着々と建築は進んでいき、新居がそこに建った。
新居に引越して少し引っかかっていたことと言えば、長屋時代に足を踏み入れた時に、女が浮いていたキッチンの場所と、新居のキッチンの場所が全く同じ場所という点だった。
新居に住んでからの俺はというと、二階の一室に自分の部屋を与えられたことが嬉しくて、相変わらず怖がりのくせに「一人で寝る!」なんて息巻たりしていた。
新しく買ってもらったベッドが二段ベッドで、二段目で寝てみたいとか思ったりしてね。
そうして迎えた二段ベッド初めての夜、事件が起こった。
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