正也の声に、老婆が振り返る。
が、何かおかしい。
「正也!止まれ!!」
慌てて声をかけた。
老婆は、顔がなかった。
正確に言うと、本来顔のあるべき場所が真っ黒な空洞になっていたのだ。
「ヒッ!!」
驚いて尻餅をつく正也を引っ張り、とにかく急いで走り出す。
何かを喚きながら、こちらに向かって走ってくる老婆。
その手には、錆びた鎌のようなものが握られていた。
「なんなんだよ!なんなんだよ!夢なら覚めてくれよ!!」
走って、走って、どれくらい走っただろうか。
気がつくと大きな家が見えてきた。
茅葺き屋根の古い家だが、直感で昔の祖父の家だとわかった。
玄関より裏口のほうが近い為、急いで裏口へ向かう。
しかし、引き戸を開けようとするが手が滑ってなかなか開かない。
「おい!早く!早くしろ!!」
正也が急かす。
まずい、もうすぐ老婆が追いついてしまう。
「開け!開け!なんなんだよ!!」
ガチャガチャと戸を動かしていると、正也が
「うわああああああ!!!」
と叫びながら、いつの間にか背後に来ていた老婆に突進していった。
と同時に引き戸が開き、躓くような形で中に入れたが、正也を呼ぼうとすると勝手に戸が閉まってしまった。
「待って!正也がまだ外に!!」
引き戸に手を伸ばそうとするが、目がグルグル回って立ち上がれず、そのまま俺は気を失ってしまった。
「あ、起きた!」
目を覚ますと、俺を覗き込むたっくんと目が合った。
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その場にいたような怖さを感じた。
異世界への扉だったのかな