消えた従兄弟
投稿者:陰影 (1)
「そりゃあアレだよ、じいちゃんち、金はあるのに家は他と比べて小さいじゃん?多分、この先にたんまり金塊とか宝石とか隠してるんだよ」
今にして思えば馬鹿馬鹿しい、いかにも子供らしい発想だが、当時の俺は何故か正也の言うことに妙な説得力を感じていた。
宝探しだと思えば恐怖心も和らぐもので、俺は正也と一緒に奥へ奥へと進んでいった。
しばらく進んでいくと、ようやく古そうな扉が見えてきた。
「お、ゴール!」
正也が我先にと扉を開ける。
しかしその扉の先に広がっていたのは、ただの広い草原だった。
「え?何ここ」
「さあ……じいちゃんちの近くにこんなところあったっけ?」
延々と続く、先の見えない草原。
周りに見えるはずの家や山すら見えない。
「……なにこれ、どうなってんの?」
「とりあえず戻ろう」
そう言って元来た扉を開けようとした正也が、あれっ!?と声を上げた。
あったはずの扉がなくなっている。
それどころか、祖父母の家すら見当たらない。ただ、何も見えない草原が広がっているだけ。
帰れない……
「とにかく、人を探そう!」
俺と正也は走り出し、誰か人がいないか探し回った。
しかし同じような景色が続くばかりで、民家のひとつすら見当たらない。
何処からか蝉の鳴き声は聞こえるが、背の高い木すら見当たらない。
これは夢なのか?現実なのか?
暑さのせいで頭がグラグラして何も考えられなくなる。
その時
「あ、いた!人、いたぞ!」
正也が大きく手を振った。
「すみませーん!」
正也が手を振る先には、カラシ色の着物を着た老婆がいた。
その場にいたような怖さを感じた。
異世界への扉だったのかな