体の上を這うナニか
投稿者:みーやっき (2)
ふいに相手の手が頬に触れる。右の頬を軽く撫でられたように感じた。
そして、それは来た時とは逆に、体を重ねたまま、這いながらゆっくりと足元へと降りはじめる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
だが相手の顔が自分のお腹あたりに達したであろうとき、また動きがとまった。
そして腹部に何かを感じた。さきほどチクっとした場所辺りだ。
そこを軽く撫でられたように感じた。いや頬ずりか?
そしてそれはまた動き出して、這いながら徐々に足元へと降りていき、最後に離れて行った。
完全に気配が消えた。そして安堵を感じた瞬間に体の緊張が解ける。
そこでようやく目を覚ますことができた。
目を開けると、さっきまでの恐怖と不穏な雰囲気が完全に消え去っていた。
「ああ夢だったか」といつものように思った。
毎回目を覚ました途端、圧倒的な現実感に「ああ夢か」と確信する。
いつも通りだ。
どんなにリアルで、どんなに怖い夢でも目が覚めた後に感じる現実感には勝てない。
毎回そうだった。
だが、今回はいつもと一つだけ違うことがあった。
さきほど体の奥で何かに噛まれた感触、あのチクっとした感触がまだリアルにそこに残っていた。
咬まれた場所がどこかと聞かれれば、指でさし示せるほどにはっきりとその場所が分かる。
だが明晰夢だ。脳がバグって体にリアルな触感を想起させるのだから、その感触が目が覚めた今もまだ残っているのだろう。
でも本当にリアルな夢だった。
あの夢から3年ほど経っている。
あの夢以降でもたまに明晰夢を見るが、幸いにもあれほど怖い思いはしていない。
そして明晰夢から目覚めるたびに、「ああ夢か」と思っている。
だが数年経ったいまも、ときどきあの咬まれた場所がズキっとすることがある。
腹部の右側、おへそから3センチほどの斜め上の場所だ。
あの時の違和感がいまも体の中にある。
そしてそこがズキっとするたびに、そこに何かあるんじゃないかと感じてしまう。
確かに明晰夢は脳がバグってリアルな体感を脳内に想起させているのだろう。
でも数年経ってもその感触が残り続けるだろうか?
それともあまりのインパクトにその感触を体が記憶してしまっているのかもしれない。
思い込みに違いない。
怖い体験しましたね。