部屋に籠るなにか

さっさと下にいこう

振り返った瞬間だった

「見たな」
後ろで声がした
ひどくくぐもった低い声だった

思わず声のした方を見ると、扉が開いていてそこから腕が伸びていた
まるで枝みたいに細い腕が、こちらの方に伸びてきて今にも捕まれそうだった

「うわああああ！！」

俺は食器を放り投げ、その場から逃げ出した

リビングに戻りカバンをとり、そのまま家から逃げた

俺はスマホの電源を切って、出来るだけ遠くに逃げた
この時ほど根無し草のネカフェ生活をしていてよかったと思ったことはない
追ってこられても俺の居場所を特定するのは容易じゃないはずだ

3日間はスマホを切ったままにして、それから電源をつけたがバイト先からの連絡はなかったようだった

俺はこのままバックレる予定だ
あんなヤバいところ二度と行きたくはない

ただ、どうしても、あれはなんだったのか気になった

あの家の付近で何か過去に事件は起きてなかったか調べたが、何も出てこなかった

だが、あのじいさんの名前

本人が名乗っていた名前を調べてみたら、何件かヒットした

20年以上前の事件の記事だった

○○容疑者
会社の同僚の女性を刺して逮捕
同僚の女性は死亡

あのじいさんは過去に犯罪を犯していた
しかも、殺人の

○○容疑者は同僚の女性を一方的に好きになって付きまとっていた
その女性は実は他の男と結婚を約束していて子供を身ごもっていた
知らなかった○○容疑者はそれに腹を立てて彼女を殺してしまった