【short_74】溶岩ゲーム
投稿者:kana (210)
旅行で観光地を訪れていた。
観光地と言っても、今は昔ほどの人気はなく、随分衰退しているようだった。
廃墟となったお店もいくつかある。人がどんどんいなくなっているのだ。
こうなると、客足もだんだん途絶えて、今開いているお店もやがて営業できなくなる。
昔よく訪れていた観光地がこうして衰退して行く姿を見るのはなかなかツライものがある。
まぁ景色はきれいだし、インバウンドでもいいから復活してくれることを期待したい。
そんなちょっと感傷的な気持ちで歩いていると、向こうから子供が飛んだり走ったりしながらやってくるのが見えた。10才そこそこの男の子である。親の姿は見えない。地元の子だろうか?
ジャンプしていたのは、どうやら道路に描かれた模様の上だけを歩くゲームをしているようだった。そんなゲームを自分もしたことがある。これは想像力のゲームなのだ。模様のある所以外はすべて溶岩。落ちたら死ぬ。あるいは模様のあるところだけ歩いて目的地に着くと今日一日良いことがあるなんていうのもある。とにかく子供と言うのは遊びの天才だ。ただの道がこうして遊び場に早変わりする。
だんだん近づいてくる子供。すごい真剣なまなざしで遊んでいる。子供の集中力たるやスゴイものだ。つい声をかけた。
「ボク、そこから落ちたらどうなるの?」
「ここから落ちたら、ドロドロの溶岩に焼かれて死んじゃうんだ!!」
「へぇ~、よっしゃ、ガンバレ! 飛べ!!」ボクは応援した。
大きくジャンプする彼。・・・やった、うまく次の島までジャンプできた。
・・・と思ったのだが、立ち上がる時にヨロけてバランスを崩し、足が片方出てしまった。
「あぁ~出ちゃったね! ハイ負け~~」そう、からかってやった。
その瞬間、少年は青ざめた顔でこちらを向いたかと思うと、足元からボッと火がついて、
あっという間に火だるまになった。
「きゃあああああ!!」・・・断末魔と共に少年は地面の下に吸い込まれて行った。
「えっ!?」・・・と思った瞬間、世界は暗転した。
真っ暗な地獄のような世界。下は赤々と溶岩が沸き立っている。自分はそこにポツンとたっている。下を見ると、今まさに溶岩に落下した子供が、消し炭のように真っ黒な遺体となって浮いている。
・・・どうやらボクは、本物の溶岩ゲームに招かれたようだった。
町の人がいなくなった理由は、過疎だけじゃなさそうだね。