儀式の呪縛
投稿者:まろ (12)
「ん?なんだこれ、ヒッ!」
とMが小さい悲鳴をあげ震えています。ヤバい物でも入っていたのかと感じ、AがMを突き飛ばし中を確認しました。
「おぉ…」
私たちに振り向いたAは少しにやついていました。Tと私はAから箱をひったくって中を確認しました。
「あっ!」
箱の中身は複数入っていましたが、まず目に入ってきたものは人間か動物か分からない砕かれた骨でした。骨の下には古びた青い手帳がありました。
「骨だ…」
TとAは比較的落ち着いておりMは少しパニックに陥っているようでした。
「は?なんで?なんで骨が俺の家にあるの?しかもこれなんの骨?は?」
「落ち着けって!動物の貴重な骨かもしれないだろ!」
Mは狼狽しきっておりTが説得しても落ち着きを取り戻しそうにありませんでした。仕方なく、私は骨をAに渡し、手帳を開いてみることにしました。手帳は最初のページが白紙であり、次のページから何か書いてありました。これがいつ頃書かれていたのかは分かりませんが、古い物だということは分かりました。そこには、「霊を降ろす手順」と大きな文字でタイトル欄に書かれており、本文の行には殴り書きでその方法らしきものが書かれていました。所々カタカナで書かれていたのでおそらく今から70年80年前らへんの時に描かれたのだろうと思います。それ以外のページには何も書かれていませんでした。私は、全員の前で手帳の内容を読み上げました。
「手帳には、霊を降ろす方法が書かれている。上から順に箇条書きで書いてあるから順に言っていくぞ。ろうそくを3本用意する。降ろす本人と縁が深いものを用意する。身体を構成するものを用意すると成功しやすい。用意したものの後ろにろうそくを3つおく。『名前を呼んで、おいでください。いらっしゃったらろうそくの火を全て消してください』と言う。消えたら成功。会話ができる。帰ってもらう時は『ありがとうございます。おかえりください』と言う。ろうそく3本に火をつけ、しばらく消えなかったら帰ってる、だそうだ。信じられんな。遊び心で吹き込まれたんじゃないか?」
読み終わった後、全員の顔を見ると唖然としていて、空気がとても重苦しかったです。本当に嫌な瞬間でした。その手帳に記された手順が一体何を意味するのか、そしてこの骨と手帳の関係性、これは絶対にこの儀式に使われたものだと推測するのは容易なことでした。
「つ、つまり…この骨でやったのか…その手帳に書いてあったことを…」
と、Aが顔を歪めて呟きました。
「信じられん…まさか倉庫からこんなものが出てきたなんて…鍵までしてここまで隠すと言うのはどういうことだ。誰が隠したんだ?」
と私が首を傾げました。
「わからない…両親は何か昔あったの?それか両親の前の人が?わからない…わからない…」
Mは相変わらずパニック状態のようで、不安そうに四方を見回しながら呟いていました。私たちも彼の気持ちは理解できます。
「なぁM。」
私は今から話すことは言ってはいけないことを理解していましたが、霊現象を信じていない私は興味本位で言ってしまいました。
「これで、お前の心が落ち着くか分からないんだけどさ、実際に俺らでこれをやるのはどう?なんか身近なもので。これで何も起きなかったらただのイタズラを真に受けちゃっただけって分かるじゃん。証明するにはこれしかない…」
Mは驚いた表情を浮かべ、しばらく悩むそぶりを見せていましたが、決心したらしく
「俺とてこれが偽物だったら気持ちが楽になる。その方法が1番の証明方法だな…やるしかない…」
と、覚悟を決めた重い声で返答しました。TとAも乗り気になり、この儀式を決行することにしました。幽霊などいないという断固とした自信が私を奮い立たせました。しかし、私には一つの懸念がありました。そう、誰が何のためにここまでしてこの得体の知れない砕かれた骨と手帳を隠したのか、という懸念です。
重苦しい雰囲気の中、これ以上倉庫の中を物色する士気はもう私たちには残っておらず、私たちはテキパキと倉庫の片付けを行いました。もちろん真っ先に問題の箱を奥へ押しこめました。誰もが、ただでさえ薄暗い倉庫になんてもうこれ以上居たくないと思っていたでしょう。迅速に片付けは進んでいきます。そして、少しの物音でさえも私たちは敏感になってしまい、片付けている時の
「パキッ」「ミシッ」
という音に私たちは震え上がってしまいました。どうにか片付けを終え、私たちは倉庫を後にしました。しかし、誰もが私の抱いた懸念を抱えていたでしょう。その懸念もあってか倉庫の明かりを消し、扉を閉める際に、光を失った倉庫から何かこちらを覗くような視線を少なくとも私は感じました。
「それで、何かあてのある人はいるのか?そういった人がいないと何もできないぞ。」
Tが顔色ひとつ変えずに低いトーンで聞きました。
憑依されることで人格が変わるというお話は良く聞きますね
Mさんはどこに行ってしまったのでしょう。また、Mさんのご両親、ご実家は無事なのか、心配ですね