サケクレー

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気がついた時、百合は部屋着のまま、包丁を持って裸足で外を歩いていた
「えっ？」
そして、酒を飲み過ぎたような激しい頭痛がしていた

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「どういうこと？」
百合の家でお茶をしながら、私は訊いた

「結局あの男の幽霊は、私の体に乗り移って酒をたくさん飲んだみたい。その後で、私の体で裕太を殺しに行こうとしたみたい。でも途中で気がついて良かったわ！人を殺していたら、今のこの幸せはなかったから」
そう言って百合は破顔した

あれから10年、50才を過ぎた百合はとても幸せそうだ

現在はバツイチ子持ちの男性と結婚している
前妻とは死別で、百合は血の繋がらない子供の継母になった

「その後は？その幽霊はどうしたの？」

「あの後すぐに実家に帰ったから分からないわ。会社も辞めて精神病院に暫く入院したのよ。体も壊れたから精密検査もしたの。その結果、子宮に異常があって子供が産めない体だということが分かったの。どうやら生まれつきだったみたい」

その時、玄関が開く音がした
娘さんが学校から帰ってきたようだ

「ママー、ただいま」
10才くらいの女の子が私たちのいるリビングに入ってきた
とても可愛い子だ
その子は私にも挨拶をすると、友達と遊んで来る、と言って出て行った

「可愛いでしょ。母親がとても美人だったからね。よく懐いてくれる優しい子なの。何よりも私の愛する裕太の子だし。今となっては前妻さんに感謝しかないわ。私の代わりに裕太の子を産んでくれたんだから」
そう言って、百合は幸せそうに微笑んだ

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この話を聞いて怖いと思ったのは私だけだろうか？

前妻は子供を産んで間もなく、突然、病気になって亡くなった
誰かに殺された訳ではない

そして男の幽霊は何だったのか？
そもそも見たのは百合だけだ
本当に幽霊だったのか？それとも百合の作り出した幻覚だったのか？

見える所で、話は繋がっていないのだ