漂う黒い煙の正体は？

職場の同僚が体験したちょっと奇妙で不思議な話を紹介したいと思う。
特定されないように少しフェイクは入れてある。

職場の同僚H子さんは大のオカルト話好きだ。
毎日のようにYouTubeで検索をしてはオカルト話やスピリチュアル話などを視聴しているのだが、最近は霊能者の動画にハマっているようだ。

一時期は毎日のように「〇〇って人の動画で紹介されている××って話は凄いよ」と尋ねてもいないのに、霊能者の動画の話ばかりしてきた。

私もどちらかというと、その手の話は好きな方なのだが、H子さんの紹介する動画は何故かあまり興味を抱くことが出来なかった。

こういうのは相性というものがあるのだろう。
H子さんの好きなオカルト話と私の好きなオカルト話が少しばかりかみ合わないだけだと思っていた。

それが２年ほど続いたある年の春頃のことだった。
それまでは毎日のようにオカルトの話題で盛り上がっていたのに、急にそういう話をしてこなくなった。

私は「もう飽きてしまったのか？」と思った程度であまり気にしなかった。
ただ、何となく様子が変だったので、何となく気持ちは憂鬱だった。

オカルト話だけではなくて、普通の会話すらあまりしてこなくなった。
他の人達に対しては普通に会話をしていたのに、私に対してだけあまり話をしてこなくなった。

少し考えてみた。

もしかして、勧められたオカルト動画をあまり視聴しなかったことが気に入らなかったのだろうか？
或いは、私が好きなオカルト動画がその人を嫌な気持ちにさせてしまったのか？

それから・・・３か月ほど経ったある日、急にケロっとしてH子さんは普通に話しかけてくるようになった。

もちろん、例のオカルト話やおすすめの動画の話もしてくるようになった。
たまたま精神的に不調だったのかな、何らかの形でオカルトと関わると霊的な影響を受けることもあるだろう。

そういう事情から私を避けていたのかもしれないという結論に至った。
下手に事情を聞いてぶり返したら嫌だったから、何故私を避けていたのかは聞くことはしなかった。

・・・そういうH子さんの向こうから一方的に話しかけてくるパターンと、避けてくるパターンが数か月おきに複数回起きた。

私は時々H子さんに「霊を見たり声を聴いたことはあるの？」と聞いてみたことはあったが、今までで１度たりともそういう体験はしたことがないようだった。
知り合いや親戚の中には不可解な体験をした人がいるらしいが、本人は皆無だそうだ。

そんなH子さんも、とうとう人生初の霊的存在を目撃することとなった。

先日の寒いある夜のことだった。
その日は品出し担当だったことで、受け持ちの場所で商品を陳列していたのだが、ふと、天井の方が気になってしょうがない。

何となく感じ取った違和感に戸惑いつつも、商品の陳列と整頓を終えて事務所に戻ろうとした時のことだった。

先程感じ取った違和感がまた襲ってきた。
引き寄せられるように、その方向へ目をやってしまったのだ。