重なる幽霊

再び子供を見る
体の中まで見通すように凝視した

すると、子供の姿が揺れながら縦に伸びた

「えぇっ！」
そこにいたのは裸の女だった
髪の毛も、体の毛も無い
口の周りの肉も抉られたように無く、歯や歯茎が丸見えになっている
ガリガリに痩せているが、腹だけが餓鬼のように大きく張り出している

そんな女が、歯をカチカチさせてニチャアニチャアと粘っこく、細い目で笑っている
見るからに不浄な霊だ

ソイツの周り一帯も、不浄な雰囲気がする

「ぅ……」
思わず声を失った夏子に老婆は言った

「以前に小さい女の子がここで死んでな、タチの悪い奴らがその子に入り込んだんだ
女の子は成仏しているが、ソイツらはその子の姿を、今でも利用しているのだ
子供の姿の方が同情を引きやすいし、油断させやすいからな」

「…気持ち悪いですね」

「おまえには、アレが何に見える？」

「…歯茎が丸見えで笑っている女に見えます」

「そうか、だがソイツ1人ではないぞ

たまたまその姿で見えるだけだ、大勢の幽霊が重なっている
類は友を呼ぶというように、低レベルの悪霊が集まって集合体となり、更に仲間を増やそうとしているのだ
おまえは、騙されるところだったのだぞ」

「………」
夏子は、あまりのことに愕然とした

「このままアレを放置したら、この付近で犠牲者がまた出るな…」
そう言うなり、老婆は夏子の背後から『歯茎が丸見えの女』の位置まで跳躍した

「！！！」

『歯茎が丸見えの女』は、老婆に体当たりされると消えた
女だけでなく悪霊の塊も消えたようで、その付近の雰囲気も綺麗になった