ヒキニクデス!!　(グロ注意)

「ダメに決まってるでしょ!!　人のモノよそれ!!」

「はぁ~～い・・・あっ!」

スマホはタカシの手をすり抜けて、シートの下に落ちてしまった。

「ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! 」

シートの下に落ちたスマホがずっと動画をループしている。

すると今度は後席で眠っていた妹のユカリまでゲラゲラ笑いながら

「ひきにくです!!　ひきにくです!!　ひきにくです!!」と叫び出した。

「あ~もう、なんなんだ」ボクがそう言うと、タカシが「今拾うから待ってて」と、シートベルトを外してくるりと背を向けた。

「ちょっと待ちなさい、シートベルトしなさい! 高速降りたら停車するから・・・」

そう言った瞬間、右の追い越し車線を走ってきた大型トラックが突然急な車線変更をしてきた。ブレーキをかけたが間に合わない。

ボクのクルマは大型トラックと防音壁の間に挟まれて潰されていく。
ほんの一瞬の出来事だったと思う。おそらく１秒とか2秒とか。
だが、それはもう世界が止まったかのようにスローモーションで流れていく。

シートベルトをしていなかったタカシの身体は空中に投げ出され天井にぶつかり、次の瞬間には割れた窓ガラスと一緒に車外へ飛び出していた。車外と言っても、そこには高速の防音壁が迫っており、タカシはクルマと壁の間にズルズルと飲み込まれて行った。

クルマは大型トラックに引きずられながらやっと止まった。
ボクのクルマはぐしゃりと潰されていたが、幸いなことにボクとママ、ユカリは助かったようだ。だが、タカシがいない・・・。

「タカシー!!タカシー!!」ボクは身体を挟まれて身動きができず、タカシの名を叫んだ。

その時・・・どこからともなく・・・「ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! 」

あのスマホの音声が流れている。

「ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ﾋｷﾆｸﾃﾞｽ!! ・・・ゲラゲラゲラ」