学校裏の不審者「金子のおっさん」

放課後、誘った友達たちが集まって金子のおっさんの家の前に来た。
いざ家に来てみると廃墟の様な家はかなり不気味に見えた。

友達たちもしばらくは周りの様子を伺ってみたり、緊張している感じだった。
僕は心の中では
（金子のおっさんがいなければ、みんなで廃車で遊べるから留守でくれ）
と密かに願っていた。

友人は意を決して家の戸をガンガンガン！と叩き
「おい！金子のおっさん！！」
と大声で叫んだ。
中からドッドッドッ！と足音がしたと思うと、ガラッと勢いよく扉を開けて金子のおっさんが出て来た。
おっさんの手には園芸用のねじり鎌が持たれていた。

あまりにすぐに出てきたので僕らは全員呆気に取られていると
「クラァーーー！！！！！」
と金子のおっさんがねじり鎌を振り上げて怒鳴ったのだ。
「うわーーー！！！」
僕らはまさにクモの子を散らすように逃げた。
他の友達のことなどお構いなしに逃げた。
逃げている途中、小学校一年生の頃の、金子のおっさんが教室にやってきたときの恐怖を思い出していた。

幸いにも捕まった友達はおらず、みんなそれぞれ逃げ切り校庭に集まってきた。
「やっぱ金子のおっさんヤベェよ」とか
「平気だったけどお前らが逃げたから俺も逃げた」
みたいな強がりを言い合ったりしていたが、内心みんなビビりまくっていたと思うし、僕もめちゃくちゃビビッていた。

その後も僕が卒業するまで生徒たちの間で金子のおっさんは噂になっていたが、その体験があって僕は金子のおっさんには絶対に関わらないようにしていた。

その後、僕が小学校を卒業したのでしばらく金子のおっさんの噂は聞かなかったが、思わぬところで金子のおっさんの噂をまた聞く機会が出来た。

中学校のイベントで学校交流会という行事があった。
学校交流会とは中学校にやってきた小学生をペアで組ませて自分の中学校を紹介して案内させる。という行事だ。

その行事で僕は組まされた男子小学生と何を話せばいいのか分からず、気まずくなって困っていた。
なんとか共通の話題で繋ごうと、なんとなく
「金子のおっさんってまだいる？」
と聞いてみた、すると
「金子のおっさんって裏に住んでる変な人？」
なんと食いついてきたのだ。
「そうそう、あの寒いんだか暑いんだか分からない格好してる」
「いる！シャツの上に上着何枚も着てる人、学校の周りをうろついてる！」
思わぬ好反応に嬉しくなった。