学校裏の不審者「金子のおっさん」

中でも特に問題になったのがスズメバチ事件。
金子のおっさんが夏に自分の家に出来てしまったスズメバチの巣を駆除しようと、雑草を積み上げ野焼きして煙を焚いたのだ。
換気のため開けていた窓から、学校にも煙が入ってきて校内は煙まみれ。
火災報知器も鳴り、そこから全校生徒が避難する騒動になった。
しかも、金子のおっさんは更に巣を刺激したらしく、空いていた窓からスズメバチが入ってきて生徒がパニックになる、という出来事があった。

一時騒然となった学校内だったが、昼休みには落ち着きを取り戻していた。
生徒たちの話題は午前中の出来事で持ち切りだ。
「やっぱり金子のおっさんはヤバい」
「授業が中止になって面白かったからまた野焼きしてほしい」

みたいな事を言っているクラスメイトもいた。

そこにクラスのヤンチャな友達が
「金子のおっさんがスズメバチに刺された！」
と言って飛び込んできた。
なんと金子のおっさんは先生が学校裏の様子を見に行った際に、スズメバチに刺され倒れており、救急車で搬送されていたのだ。

その後、金子のおっさんの話はしばらく聞かなくなったが、数か月経つといつの間にか戻ってきたらしく、また生徒たちの間で噂が回るようになった。
以前と変わらず、タンクトップの上に何枚もボロボロジャケットを着こんだ風貌で。

今思えば、僕がもっと勘がよければここで違和感に気づいていたのだろうか？

6年生になった時も変わらず金子のおっさんの噂は回っていたが、

ある時クラスのヤンチャな友人が
「金子のおっさんの家に行こうぜ」
と言ってきた。
なんでも友人の好きな女の子が「靴下をくれ」と言われ付け回された。と彼に言ったらしく、
「俺が金子のおっさんに文句を言ってやる！」と啖呵を切ってしまったのだという。

いや1人で行けよと思ったが、正直に言えば僕もずっとあの金子のおっさんの家の廃車や廃タイヤで遊んでみたいと思っていた。

その友人がやたら誘ってくるし、僕も6年生になって気が大きくなってきたこともあり、
放課後に友達4人で金子のおっさんの家に行くことにしたのだ。

学校からは「裏の家はスズメバチが出るから近づいてはいけない」と注意が出ていたが、
友人はお構いなし「ガツンと言ってやる！」と息まいていた。
僕はと言えば、なんだか冒険に行くような気分でワクワクしていたのを覚えている。