姫さん
投稿者:大将 (3)
女性はもう、居ませんでした。
「お前は…大丈夫か」
おじいさんがため息混じりに私の頭をこずき、その手でこちらを無理やり向けながら強い語気で
「あそこは整備されていないし、動物も何が居るか分からないから入っちゃいかんって言われたやろ?危ないんだ、大人でも死んじまう様な所ばっかあるんだから」
そんな内容を言い聞かせるように私に言いました。
「でも人おったし…」
子ども特有の言い訳をしつつ、おじいさんを見れば「ん?」と不思議な顔をしたのが分かりました。
「人おったんか?」
「おった、女の人」
「ん?」
信じていない…という訳ではないが不思議な顔をしたおじいさんが私にこう聞きます。
「着物着てたか」
「…着てた、お父さんの名前で呼んできてめちゃくちゃ足早くて一緒降りてきたけど」
先程女性がいた箇所を指差し、私は「あそこで止まってこっち見てニコニコして」
そう続けようとした時、おじいさんは困惑と言った声で
「お前女ん子やろ?!」と、肩を掴みながら前後に揺らされおじいさんは私に問いかけます。
確かにこの中で1番背は高いし、髪も短く切りそろえタンクトップに短パンの私はどこから見ても男の子のような容姿ではありますが、性別は確かに女です。
おじいさんは未だよく分からないと言った顔で軽トラの荷台を顎で指し、乗れと指示しました。
まだ日は真上当たり、まだまだ遊びたかった私たちは少し渋りましたがおじいさんの強めのゲンコツで強制的に荷台に乗せられ、各それぞれ自宅へと送り届けられてしまいました。
何故か仲間の中でそこから二番目に近いはずの私の家は後回しにされ、最後に送り届けられたことに不満を感じつつ揺られたさき、ようやく私の家に着きました。
おじいさんは私の手を引き、「○○さーん、××ですー!」と大声で祖母を呼びます。
出てきた祖母に第一声、おじいさんは私を押し出し「あんたんとこの孫は女ん子だよな?」と再び聞きます。
「女の子なんだけど本当にやんちゃで〜」と世間話をしようとしたその時、おじいさんが割り込むように
「姫さん見えよったぞ」
と祖母に言いました。
姫さん?お姫様?あの人が?
おじいさんを見てた私はそのまま戸惑いながら祖母の顔に目線を向けました。
「えっ、えっ?お姫さん見えたの?どうして?」
祖母は私を引き寄せ、ぎゅっとそのまま抱きしめ私の身体をぺたぺたと触りました。
「ばあちゃんどうしたん?変な人なん?あの人…父ちゃんの名前呼んできたよ…?」
そう言えば、祖母はヒッと引きつった様な声を上げて力が抜けたようにその場に蹲りそうになっていたと思います。
私はそんな祖母を支え、奥にいるであろう祖父を呼び、困ったようにおじいさんに目線で助けを求めました。
マジで
姫さん怖すぎやろ
後の吉田沙保里である
久しぶりに怖い話しでした。
妖怪なのかもしれないですね。
チェンソーマン
怖いというより何か物悲しいお話だと思いました。