とある元バンドマンの話。
2001年4月、俺はとある小さなライブハウスで、
インディーズバンドのライブを見ていた。
その日は4組のバンドが参加しており、
その中で群を抜いて人気だったバンドがあった。
歌も演奏も上手いし、メジャーデビューも間近じゃないかなんて言われていた。
そのバンドのボーカル、Sは地元の後輩で、
高校時代一緒にバンドをやっていた過去がある。
俺は就職とともに音楽から離れてしまったが、
Sは音楽で生きるんだと決意して、バイトをしながら活動を続けていた。
口癖なのか、「音楽は人を変える」とよく言ってたっけ。
ライブが終わり、久しぶりにサシで飲みに行こう、という話になり、
出待ちのファンに一通り対応した後、俺たちは居酒屋に向かった。
「相談があります」
ビールで乾杯した直後、開口一番にSが言った。
内容は、今あるレーベルからメジャーデビューの話が来ている。
でも、バンドとしてのレベルはプロレベルじゃない。
バラード系の曲も人気だし、ソロでデビューしないか?と言われているそうだ。
ソロデビューするにもバンドメンバーに申し訳が立たないし、
精神面があまり強くないSは、ギター担当でバンドのリーダーであるKに、
支えてもらいながら活動していた。
メジャーデビューは夢だけど、Kなしにはとてもやっていけない。
Sは音楽で生きていくと両親に打ち明けたとき、
勘当同然で家から追い出され、友人や教師にも馬鹿にされた。
「見返してやりたい」
そう思っていたSは、メジャーデビューは願ってもない話だった。
でも、一人ではとてもとても…
俺は他のバンドメンバーにも面識があったし、
バンドメンバーの気持ちを考えると、全員でレベルアップして、
全員でメジャーデビューしてほしい。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。