サタニック・メッセージ
投稿者:瑠璃ガキ (4)
サタニック・メッセージは、一般的に逆再生(バックマスキング)という手法を用いるとされている。
音声や歌詞を逆向きに再生することで、通常では聞こえない音やメッセージを聞くことができるという。
その中には、悪魔崇拝や自殺を促すようなメッセージが含まれていることもあったという。
「なんて蠱惑的なのだろうか。」
僕は身の震えるような妖しい高揚感を抱いた。
僕の中に残る微かな中2心が擽られたのか、はたまた、穴だらけで紫色に変色した心の隙間を文字通り”悪魔”につけこまれてしまったのか。
この手法を取り入れたからといって、実際に何かが起こるとは思わなかった。
だからこそ、思いつく限りの悪意を込めて楽曲を制作した。
ヴァース(Aメロ)は、「心臓発作」を逆再生にした「アッソウジンニシン」という歌詞を採用した。
これを変化のない1度の音程と16分音符の早口で繰り返し続けるというフレーズを作った。
ブリッジ(Bメロ)は、ディミニッシュコードを多用し聴く者の不安感を煽る狙いを持たせた。
コーラス(サビ)は、とどめをさしにかかった。
「みんな死んじゃえ」の逆再生「エェアシィニシャンニン」という歌詞をカウンター・メロディーとして盛り込んだ。
メイン・メロディーは特に意味の持たない言葉だが、「あかさか」や「いろどり」といった音声回文(逆再生にしても同じ日本語に聞こえる言葉)を使用した。
これは後述する最低最悪の悪意をカモフラージュするためのものだ。
コーラスが終わり、2番に当たる部分をこれの逆再生にするのだ。
そして応用実習の合評会。
教員も同期もみんな、音声回文に夢中で本当(真実)の歌詞に気が付かない。
(同期)「逆再生なのに同じ言葉に聞こえるー!」
(教員)「言葉は同じに聞こえるけど、それぞれの言葉の順序は逆になっているのが面白いな!」
間抜け共は気が付かない。
さっきからずっとメロディーに対してカウンターで「みんな死んじゃえ」という歌詞が聞こえていることを。
逆再生された楽曲がヴァースの「心臓発作」という歌詞に到達した頃、1人また1人と胸に手を当て衣服を捻り上げ、苦悶の表情を浮かべながら地面に倒れ込んでいく。
笑いが止まらなかった。
人生でこんなにも心の底から笑えたのは初めてだった。
僕は間違いなく笑っていた。
一滴の涙が零れ落ち。
膝がガクガクと震えだした。
「膝も笑っているのだ。面白い面白い!って。なあ?そうだろう?」
自分で自分に戯けて見せたが、次の瞬間、涙と恐怖が止まらなくなった。
タイトルカッコイイね。
将来有望な娘さんですね