人間の悪意

1◯6氏の怪談朗読を毎日聴き、最近では自分でも怪談朗読を始めてしまうほど、怪談や怖い話が大好きな俺が、先日実際に体験した怖い話を聞いてくれ。

自分の身バレは気にしないが、自分以外の個人的な情報が特定されてしまうと、問題になる可能性があるため、一部伏せ字やぼかした表現を使うことを先に宣言しておく。

先日の夜、副業として始めてみた”某フードデリバリーサービス”の初仕事を試みたんだ。
場所は〇〇府〇〇市。事件は3件目の配達の時に起こったんだ。

それはロングの案件で、商品を店舗から受け取るところまでは何事もなかった。
指定された住所まで、専用アプリのナビゲーションに従って向かう。

で、指定された住所（アプリで目標地点としてピンがセットされた場所）に到着したんだが、該当する建物が存在しないのね。
お客さんの設定不備や専用アプリの不具合などで、こうなることがあると事前に知っていた俺は、専用アプリを通してお客さんに電話を入れ、状況を説明してお届け先を改めて確認しようとしたんだ。

電話に出たのは、声色から30代か40代くらいを連想させる少し陰気臭い感じの男性だった。

俺「大変恐れ入ります。〇〇（サービスの名前）の者ですが～」

っと状況を説明すると、少し戸惑っているようにも、妙に慣れているようにも、感じ取れるような違和感のある雰囲気ではあったが、正しいお届け先の情報を「近くに何がある～」などと言いながら丁寧に教えてくれた。

しかし、会話の途中で電話が切れてしまった。
“児童公園が近い”との情報を得ることができ、現在地からかなり近いところに児童公園があることが確認できたので、ひとまずそっちの方へ向かうことにした。

児童公園に着くと交差点を挟んで向かい側に、アプリにある情報と電話で得た情報に近い建物を発見した。
そこで俺は、すぐさまお客さんに電話をかけ直し、児童公園に移動したこと、建物を見つけたかもしれないことを報告して、確認をとった。

建物の外見や看板に書かれている名前などを伝えると、間違いないとのことだった。
アプリには”ビル”と書かれていたが、それはマンションやアパートと言った方がしっくりくる外見のものだった。（これは俺が世間知らずなだけでビルなのかもしれん）

302号室の扉の前に置き配という指示だったため、俺はその通りにし、扉の横に商品を置いた写真を撮影した。
置き配ということもあり、なんとなく鉢合わせるのも良くないかと思い、すぐそばの階段の陰に移動し、写真とお届け完了メッセージを送信した。

すると、直接見たわけではないが、1分も経たぬ間に扉が開く音と商品の袋を掴む音が聞こえてきた。

その時は、「まぁ、トラブルで少し遅くなってしまったし、早く食事にありつきたかったってのと、直前までやり取りをしていたので、あとちょっとで俺が来ることも分かっていただろうから、スタンバってたんだろうな。」と思って気にしなかったんだけど・・・。

その後、俺はちょっと疲れたってのと、お手洗いに行きたくなったってのもあって、ちょうどそこにある児童公園でひと休みしようと思ったのよ。

で、公園に着いてお手洗いに入ろうとした瞬間気付いた。
さっきのお客さんから大量の不在着信が、アプリからではなく直接スマホに入ってんの。（配達直後ならお客さんに配達員の電話番号が表示されるらしい）

「何だ！？何だ！？」と思いながら、次の着信で電話に出たんだ。
そしたら「商品まだ届いてません」と衝撃発言。

自分が建物もしくは部屋番号を間違えた可能性もあったから、もう一度、建物と部屋番号を確認したらさ、さっきは「間違いない」って言っていたのに、今度は「違う。そこじゃない。」とか抜かしやがんのよ。

で、そこからお届け先の情報を改めて説明しようとしてきたんだけど、俺はそれよりも先に、商品を回収しないと不味いと思って、その旨を伝え、商品を回収してからかけ直すことを約束し、電話を切って商品回収に向かったのね。

そしたらさ、案の定商品が無くなってんのよ。そらそうだよね、電話で「届いてない」って言われた瞬間はこっちも焦って失念してたけど、配達完了通知の後すぐに商品を回収している音が聞こえてたんだからさ。

でも、まだ自分のミスの可能性も0ではないわけだからヤバいと思って、ひとまずお客さんにリダイヤルしたんだが・・・。