お隣さん
投稿者:やうくい (37)
「恐らく、犬神の呪いを受けてるね。」
「犬神…?」
「犬を使って相手を呪う術だよ。地面に犬の体を埋めて、首だけ出して放置して、餓死寸前のところで首を切り落とすっていう残酷なやり方さ。」
私は隣の家で三日以上聞こえていた犬の鳴き声を思い出しました。
「それで、心当たりはある?」
「隣の家で犬がずっと鳴いていたんだけど、苦情を言った日の晩に聞こえなくなった。もしかすると、その犬が使われたのかも。」
「家がおかしくなる前に、何か変わったことはなかった?」
「そういえば、庭が荒らされたような形跡があって、二人とも不安がってたな。」
「それだ。」
弟は車から大きなシャベルを取り出すと、庭の一部を掘り返し始めました。
「あったよ。」
土の中からは人の頭くらいの大きさの黒い壺が出てきました。
何重にも紐で結ばれ、厳封されています。
「この中に恐らく犬の首が入ってるね。開けない方が良いから確認はしないけど。」
弟と壺を眺めていると、ふと視線を感じ、私は隣家の方を見ました。
お隣の奥さんが、窓からこちらを見つめていました。全くの無表情で瞬きすらしません。
ゾッとした私は弟を連れ、すぐに家の中に入りました。
「お隣の奥さんが、こっちを見てたよ。」
「うん、あっちからしてみたら、これが見つかるのはかなりまずいからね。」
「これからどうしたらいい?」
「まずはこれを持ち帰って供養するよ。手順を守らなかったのか、そこまで強力な物でもなさそうだからね。」
弟は颯爽と帰っていきました。
一人取り残された私は、呆然と立ち尽くし、その日は眠らずに朝を待ちました。
翌朝、痛みが嘘のように消えたらしく、妻が起き上がって朝食を用意してくれました。
今までは当たり前だった事がこんなにも有難い事だったのだと気づき、私は泣いてしまいました。
娘も体が臭いと言いながら部屋から出てきました。立ち上がって抱きしめると、嫌そうな表情を浮かべながら当たり前のように風呂に入っていきました。
弟がなんとかしてくれたんだな。
私はそう思い、お礼の電話をしました。
「おう兄貴、おはよう。」
「きちんと処理できたんだな。本当に助かったよ。ありがとう。」
「正直、焚き上げしただけだ。きちんと完成された犬神なら、こうはいかなかったよ。」
「ところで、どうして俺にはなんの症状も出なかったんだ?」
「兄貴は一応神主の一族だよ。そこらへんの人よりはよほど強く守られてるんだ。」
「なら娘はどうしてあんなことに?」
「氏神様に挨拶させてないだろ。そういうのを蔑ろにすると、いくら一族でも守ってくれないさ。」
私は娘と妻を実家へ連れて挨拶に行こうと、固く誓いました。
「ところで、隣家の事だけど…」
「気にしなくていいよ。あちらはもう何もできない状態だろうさ。」
「どういうことだ?」
「残酷な手段で呪物を作って、しかも呪った相手の命を奪えなかった。そういう場合、それなりのものが返ってくるってこと。」
そこが知りたい
隣の旦那さんも薄々気づいてたとか、その人もなんかされてたとか
そもそも奥さんは誰を呪おうと儀式を行っていたのか
何故その方法を知っていたのか
旦那さんの立場は夫なのか付人なのか生贄なのか、あるいは・・・
考えさせられる御話でした
そしてやはり、祖先は大事にするべきですね
犬と子供が可哀想
単にペットの鳴き声を注意されただけで呪いをかけるってのも考えづらいからなあ
実はそれは聞こえちゃいけないものだったとか
もしくは注意されたことは単なるきっかけで、呪いを試せる環境を探していたとか…?
まあすべて妄想にすぎんけど
人を呪わば穴二つ!
専門用語では「人を呪わば穴七つ」と、言います。
本当のターゲットは自分の夫だったのかな…
それが苦情の件で急遽隣人に矛先が向いたとか
やっぱり神社やお墓参りに行っておかないと先祖に守れない