悲しい灯(ともしび)
投稿者:kana (210)
「・・・うん・・・サキちゃんやユイちゃんと、もう一緒に帰れないんだなって・・・」
「・・・うん、父さんも寂しいよ。でも、陽菜だけでも助かってくれて、本当に良かった。
そのことだけは神様に感謝してるよ。だって、もし陽菜まで天国に行ってしまったら、ボクはもうどうなってしまったか判らない。・・・陽菜のいない人生なんて考えられないよ」
「神様が本当にいるなら、どうしてサキちゃんやユイちゃんも助けてくれなかったの?」
陽菜の頬に、今度は本当の涙が一粒流れる。
「・・・うん。・・・今度の日曜日、また一緒にお墓参りに行こうな」
暗い雨の夜。テールランプの赤い光跡を残しながらクルマが走り出す。
住宅街に入ると家々の窓からあふれる光が暖かい。
そのひとつひとつにドラマがあり、生活がある。
人が生きている証拠がそこにある。
K氏の家の窓からも、明るい団らんの光が漏れてくる。
だが、その色はどこか物悲しい色をしていた。
3年前、塾から帰ろうとして歩いていた中学生のサキ、ユイ、陽菜の同級生3名が、
猛スピードで走って来たクルマに跳ねられる事件があった。
その日もこんな雨の夜。男は泥酔しており、その場ですぐ逮捕された。
犯人が逮捕され、飲酒運転の罰則が厳しくなろうとも、
この事件で失われた尊い3名の命は、もう帰ってくることはない。
その日から、K氏の家は時間が止まったままなのである。
亡くなった娘が待つ塾へ、毎日クルマで迎えに行く日々がつづいている。
願わくばこの家庭に、いつか平穏な日が訪れることを祈っています。
切なく泣かせる…
↑kamaです。さっそくお読みいただき感謝です。
一部ですが、より良い表現に書き換えました。よろしくお願いします。
切なくて言葉が出てこないです。
怖い話ではなくて切ない話ですね。事故で家族を失った家は本当にそうなります。