道祖神

私は『見える』わけでも『感じる』わけでもない人間なのですが、
実家の目の前にある道祖神には何かあると信じている。
それは実家を出て目の前の道路を挟んだ向かいにあり、くすんだ赤い小さな鳥居と苔の生えた祠と大きな大きな御神木がある。
両隣にはおしゃれな家が建っているのだがそれがより一層その鳥居を異世界感漂わせてくる。
小さな頃から毎日「行ってきます」「ただいま」と声をかけるのだがその度気持ちいい風が鳥居に向って吹いていた気がする。(気のせいかも知れないが)

そんな子供時代、一度私の中で大きな事件があった。
友達が行方不明になったのだ。
警察も来て、小さな私にも聞き取りされたくらいだった。

そこから1週間後、友達が祠の前で見つかった。
家の前にある鳥居なのに誰も気づかなかった。
友達の母親曰く見つかった際に「どこに行っていたのか？」と聞くと「ほんのちょっと鳥居の中を見てただけ」らしく1週間経っていることに気付いていないようだったそう。
本当はどこかをフラフラしてたのか、はたまた道祖神に招かれたのか。
あれから随分経ち私達はすっかり大人になった。
友達は世帯を持ち、幸せに暮らしている。
私も独立して都内に住むが、実家に帰る度思い出してはフッと思う。
道祖神には一体ナニが住んでいるのだろうか？