忘れさせてくれない
投稿者:ぴ (414)
だけど、新恋人ができたあたりに、気味の悪い出来事が続きました。
それは亡くなった恋人に似た人を見たという目撃談を頻繁に聞くようになったことです。
最初は仲のいい友達が私の家に遊びに来る途中で、とても似ている人を見たという話でした。
見かけただけで声までは聞いてないけど、あまりにそっくりで追いかけてしまったらしいです。
しかし、その人を追いかけた先は行き止まりで誰もいなかったといいます。
それから、亡くなった恋人を知っている近所の人や他の友達からも目撃証言がありました。
そのすべてが私の家の付近で見たという目撃談なのです。
さすがにちょっと気味が悪くて、しばらく家の周りに塩を撒いたりしてしまいました。
そうこうしている間に、亡くなった恋人の命日がやってきたのです。
私は毎年のことなので、例年通り彼のお墓にお参りに行くことにしました。
そのことを話したら今の恋人が付いていきたいと言い出したのです。
私は少し迷ったけど、亡くなった恋人に報告しようという気持ちに切り替わってゆきました。
亡くなった恋人も私がいつまでも落ち込んでいるよりは、恋人ができて前向きになっていたほうが安心するだろうと本気で思ったのです。
こうして彼の命日に、今の恋人と二人でお墓参りに行きました。
いつものようにお墓で深くお参りして、近況報告してきました。
今は彼氏がいて、支えてくれているから安心してねと心の中で話かけました。
春にしては風がびゅーびゅー吹いて肌寒いなとそれは気になっていたのです。
そして隣にいる恋人が元恋人のお墓の前で手を合わせたときでした。
急に突風が吹いたと思ったら、カランカランとすごい音がして、ドンっと彼に何かがぶつかりました。
どこにあったものかまでは分からないけど、誰かのお墓に忘れていったちりとりが風で飛んできたのか彼の体にぶち当たった音でした。
プラスチック製の軽いものなのでケガするほどではなかったけど、結構痛いと思われる当たり方でした。
彼はというとすっとんきょうな顔をしており、「はは、お前にやらん!て言われたかも」と苦笑いしながら言っていました。
私もその場では笑って済ましましたが、なんだか縁起が悪い気はしました。
その帰り道のことです。
私がここまで連れてきてくれた彼の車に乗り込むと、隣に大きなごみ袋が置いてあったのです。
「なにこれ?」と私は聞きました。
だって来たときは、その車には何も乗せていなかったはずです。
彼のほうもびっくりした顔で、「誰が乗せたの?」と奇妙な顔をしていました。
しかし車の鍵はきちんと施錠してあったはずなのです。
彼がおもむろにそのごみ袋の中身を確認しようと袋を開けました。
怖い。
嫉妬深い人だったのかな?
彼女を怖がらせるな!
彼女が忘れられなくて成仏できないんだね