捨てられた人形

まさか人形が動いてしゃべるなんて思わなかった私はさすがに身の毛がよだちました。

また人形がこっちに這ってこようとしたので、必死になって人形が来ないように闇雲に手で払いました。

そしたらうっかりその手が人形に当たり、ぶちっと変な音がしたのです。

おそるおそる目を開けると、さっきまでいた人形はその場にいなくなっていました。

私は恐怖を感じながらも姉の布団の中に潜り込み、人形がまた襲ってこないように警戒しました。

そうしていたのですが、気づいたらそのまま眠りに落ちていたみたいです。

翌日、姉に何で私の布団にいるのか聞かれて、「変な夢をみて」と私は言いました。

起きたときは本当に悪夢を見たと思いました。

でもその日からあの人形が忽然と消えたのです。

しかも気持ちの悪いことに、姉の布団の下から人形の腕の部分が出てきて、家族みんなでぞくっとなりました。

あれから姉の咳も治って、今は元気いっぱいです。

公園で拾ったあの人形は何か曰くつきで捨てられたものだったかもしれません。

安易に人形を拾うことの怖さを知ったのはこの出来事があったからです。

そして私が払いのけたときに「ぶちっ」と音がしたのは、きっと腕が取れた音だったのだろうと思うと、あれは本当に人形だったのかと怖くなることがあります。