いつも話しかけてくる男の子
投稿者:KIRYU (1)
バイト先の飲食店によく男の子がいました。幼稚園児くらいかな?いつもニコニコしていて、ハキハキとしゃべる子で、いろんなものに興味津々のようでした。
最初はホールのボックス席の片づけをしていると、机の下から驚かされました。
その後はトイレ清掃に行ったら鏡を見ていたり、子供用の飴を補充しようとしたら飴を選んでいたり。
私の教育係をしてくれていた主婦パート(以下Aさん)さんに聞こうとしたところ、お客さんが来たので聞けないということが何度か続きましたが、誰も何も言わないのでAさんが子供を連れてきているのかと思っていました。
ですが、私が仕事に慣れてきて、ランチタイムに出勤した時のことです。
その日はAさんが急病で休んだので代わりに私が出勤になったのですが、ボックス席の片づけをしているといつもの男の子がまた机の下から驚かしてきました。私は「今日はお店が混んでいるから遊んじゃだめだよ、裏に行っててね」と言うと、その男の子は少し不貞腐れたような表情で厨房のほうに行きました。
一応声がけしたほうがいいと思い、キッチンさんに「Aさんのお子さんが厨房に行きました!」と伝えました。
するとキッチンさんは「え?Aさんのお子さん?」と不思議そうにしていましたが、話す時間もなかったのでそのまま時間は過ぎていきました。
ランチタイムのピークが終わって一息ついたとき、キッチンさんに「さっきのAさんのお子さんがこっちに来たって、どういう意味?」と聞かれたので「いつもAさんの出勤日にいる男の子いるじゃないですか、4~5歳くらいの。その子がホールで遊んでいたので裏に行くよう注意したんですが、キッチンに行ってしまったので、声がけしました。」と言いました。
そこでまた不思議そうな顔をするキッチンさん。そこで私は思い出しました。今日はAさんが休んだ代わりに自分が出勤しているということを。
ということはあの男の子は誰の子供だろう…?
翌日、出勤してきたAさんに昨日のことを話すと、Aさんのお子さんに4~5歳くらいのお子さんはいないとのことでした。
ですが昨日だけでなく、何度も見かけて話している私は納得できず、店長に話に行きました。
すると店長が「もしかして、この子?」と一枚に写真を見せてくれました。そこにはいつも話しかけてくる、あの男の子が写っていました。
私が「そうです!この子です!店長のお子さんだったんですか?」と聞くと、店長がポツリと話してくれました。
「この子は俺の弟だよ。30年以上前に交通事故で亡くなったんだ。たまにお客さんにホールで子供が走り回っているとか、ひとりで外食に行ったら二人分の水が出てきたりとか、自分の周りでおかしなことが起こると思っていたんだけど…。そっか、弟が俺の近くにずっといたんだね。そっか…。」
私は今まで自分が話して、人懐っこく私にいたずらを仕掛けてきていた男の子が、実は霊だったことに衝撃でしたが、店長の寂しそうな眼差しや嬉しそうにホール席を見つめる眼差しに、何も言えませんでした。
大好きなお兄ちゃんのそばに、いたかったんだね。