2回目
投稿者:メロリンきゅ (1)
これは私が実際に体験した話です。今から5、6年前ぐらいでしょうか。
当時の私は20代後半に差し掛かった頃で、下っ腹が中年への第一歩といわんばかりに出始めてきた時期でもありました。
特に意中の相手がいたわけでもモテたかったというわけでもありません。
しかしながらなんとなく受け入れがたい体の老化にあらがうために運動を始めようと思いました。
私は意思がそれほど強い方ではなく、いつものように3日坊主で終わるのが目に見えていたので継続のための工夫をしました。
まあ正直なところ工夫と言えるほどのものではありません。
単純に自然の中を散歩するのが好きだった私は、地元にある山のハイキングコースを休日に歩くことを習慣にしようと考えただけです。
結論から言うと好きな自然の空気を吸いながらのハイキングは苦には感じませんでした。
全体の道のりだと大体頂上にある展望台について帰るまでの往復で4時間程度はかかりました。
それほど有名な山でもないため昼間にそのコースを訪れてもたまに何人かの人とすれ違うぐらいです。
そのため山の静寂を十分に楽しむことができ、気が付けばこの習慣を続けて1か月の大台にのっていました。
ただ、その大台を突破してから初めての危機が訪れます。
ハイキングに行く前日、いわゆる華の金曜日に友人と飲み屋で深酒をしてしまいました。
次の日はみなさんのご想像通りです。
起きた時間には日も暮れかかっており、ハイキングに行くには明らかに遅い時間になっていました。
とはいえせっかく1か月続けてきた習慣です。お酒が原因で断念するのはもったいない気がしました。
幸い2日酔いの兆候は見られなかったので私は日が完全に落ちる前に山へ向かうことにしました。
夕暮れに照らされたいつもの山道は神秘的な反面不気味にも映りました。
ただ、ハイキングコースの入り口まで来た以上、登る以外の選択肢はありませんでした。
いつものように自然を楽しむ余裕はなく、風でガサガサと揺れる木々にびくびくしながら速足で山を登ります。
気が付けばいつもより30分ほど早く頂上にある展望台についていました。
恐怖が私の足を何割か増しで強靭にしたからでしょう。
暗い。
それが頂上についた私の感想でした。
展望台といえども、その周りの木々は伸び放題で伐採されておらず、夜景が見えるわけでもありません。
当然そんな場所ではすることもないので着いてそうそう下り始めることにしました。
ですが、帰りは来た時の様には早く歩くことが出来ませんでした。
それもそのはずです。
展望台に来る手前まではまだ夕暮れの光がありましたが、その時点ではもう木々が黒い塊にしか見えないぐらいには真っ暗だったのですから。
私は残り少ないペットボトルの水と懐中電灯モードにしたスマホを握りしめて山を下っていきます。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。