2回目
投稿者:メロリンきゅ (1)
当然、ハイキングコースと言えど山中ですから街灯などはありません。
光と言えば手元のスマホと生い茂る枝葉の隙間からわずかに見える町の光程度のものでした。
いや、だったのです。時間で言うと夜中の10時ぐらいだったでしょうか。
私はもう一つ、光を目撃しました。
その光は青白く光っているように見えゆっくりと山道を登って来ていたのです。
それまでは、不気味な山の雰囲気と滑らないように足元を照らすことばかりに集中していました。
ですから5メートルぐらい先にそれが近づいてくるまで、その光を認識できていませんでした。
正直心臓が飛び出そうなほどびっくりしましたが、その光の正体を把握して冷静さを取り戻しました。
それは青白く発行するランタンを持って腰を45度ぐらい傾けて歩いていたおばあさんだったからです。
そのおばあさんは虚ろな目でうつむきながら青白く染まった坂道を歩いていました。
こちらに気づいていないのか私を一瞥することもなく横を通り過ぎていきます。
不思議と恐怖は感じませんでした。暗闇にいる孤独よりも人の存在の方が上回ったからでしょう。
今思えば明らかに不自然なのですが、暗闇が私の思考を鈍らせていたのかもしれません。
その時の私は徘徊癖があるおばあちゃんなのかなぐらいにしか思っていませんでした。
そしてまた1時間程度歩きおばあちゃんの存在を忘れかけたころ、ハイキングコースの入り口付近まで戻ってくることができました。
足元を照らしながらの下り道のため思ったより時間がかかってしまいました。
ですが暗闇の恐怖から逃れられるとほっとしたのもつかの間、私の人生で最も恐ろしかった瞬間が訪れたのです。
なんと5メートル先にまた青白い光が見えてきたのです。
そして先ほどと同じようにランタンを持った老婆が同じように腰を曲げながら、同じようにこちらに一瞥もくれずに青白い坂道を登っていくのです。
私は出口が近くなってゆるくなっていた歩みを速めて全速力で山道を下っていきました。
だってそうじゃないですか?
私はあの青白い老婆と最初にすれ違ってからもう一度すれ違うには、あの老婆が僕よりも早い速度で山道を下らなければならないのですから。
その時点で私の中であの老婆はこの世のものではないことが確定したのです。
それを認識した私は怪我など全く気にせずに山道を駆け下りました。
喉に血の味が広がりきった頃には、街灯の照らすハイキングコースの入り口まで来ていました。
その付近でようやく生身の人間の姿を見つけた時、初めて安堵することができました。
後で聞いた話なのですがその山は霊山らしく、色々な心霊現象が起こることで地元では有名だったようです。
勿論それ以降私の下っ腹が引っ込むことはありませんでした。
皆さんも山の中に向かうときはくれぐれも日中に訪れることをおすすめします。
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