俺はあれから一度も山に入る事は無かったんだけど、俺が高校に入ったちょっと後のことだったかな。
何かあの山で大量の動物たちの骨が見つかったらしい。
ただの動物の骨ならそりゃ鹿とか猪がいるんだから有って当然だろうと思ったが、中には人骨らしきものが一部混ざってたそうだ。
詳しい話は知らないが、当時の地元では「殺人?」「遭難者?」「事故?」と色んな憶測が飛び交ってたが、続報が無かったからすぐに話題から消え去った。
だが、俺はグーグルマップを開いて当時の記憶を頼りにしながら例の山を確認してみた。
すると、意外と大したことの無い広さに驚愕するが、所々山の禿げた場所を見ては「ここだったかなー」とか「この辺だっけ」と呟きながら、山の中にあった小屋の場所を探していた。
まあ小屋らしきものはグーグルマップでは見つからなかったが。
それでもう高校生になったし、当時と比べて恐怖心も薄れてたから直接山を登って探すことに決めた。
何年ぶりかの入山だが案外景色を覚えているもので、俺は軽やかに「こっちっぽいな」と茂みの中を進んでいくのだが、やっぱり小屋は見つからなかった。
あの山の中の平らな場所らしき所は見つけたんだが、小屋なんて無かった。
記憶も随分と頼りにならないくらい色褪せてるので、その場所が小屋があった場所と断言できないが、俺はあの小屋が消えたと感じた。
当時は必死で気が回らなかったが、入山からこの場所まで高校生の足で僅か二十分もしなかった。
あの時は随分とさ迷っていたと思ったが、遭難でよく聞く、同じ場所をぐるぐる回るというものを再現していたのだろうか。
俺としては、斜面を下るようにひらすら下へ降りていると思っていたのだが、高校生になった今、その辺りの記憶が曖昧になっている。
だが、そこから当時を振り返って小屋の場所から逃げた方角に下山してみると、当時見た景色と合致するくらいそっくりな工場の煙突や屋根が確認できたし、助けてくれたおばちゃんと出会った土道にもちゃんと出れたのだ。
時間にして十分ちょいだった。
当時は一晩も駆けずり回ってやっとのことで山から抜け出せた場所なのに、グーグルマップで位置を確認すれば、俺が入山した所からそんなに距離は開いていなかった。
たぶん、麓をぐるっと迂回して辿り着ける場所かな。
いったい当時の俺はどこを走り続けていたのだろうか。
今では、例の小屋も見つからないし、こうして入山してもあの変な生物もヘンテコな鳴き声も聞こえない。
それでも俺は発見された動物の骨の中で見つかった人骨は、恐らくあの変な生物に襲われた被害者ではないかと疑っている。
俺は運よくあの生物から逃げる事ができたが、きっと俺と同じように山に入ってあの生物に襲われた人が居るんだと思った。
あのヘンテコな鳴き声が人を誘う合図なのかもしれない。
もし山に入って『クゥ、クゥ、クゥ』と聞こえたら、引き返す事をおすすめする。
たぶん、鳥とか小動物じゃなくてあの変な生物の可能性もあるから、興味本位で声を追わない方が良い。
俺みたいに生きて帰れる保証はないからな。
























怖い