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心霊

にょい猫さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

夜中のキツネ
短編 2023/03/10 19:46 886view

私が24歳の時でした。当時私は転職に向けて、ホームヘルパーの資格を取ろうとしていました。仕事の都合で、遠方の教室でないと休みと授業の曜日が合わなかったので、授業の日は始発で通う日々でした。

講座もいよいよ大詰め、施設での実技研修が始まり、「研修は朝からだから、気持ちに余裕を持てるよう前日入りしておこう」と研修予定の施設付近のホテルを予約。

明日からの現場での実践に期待と不安でいっぱいの中、宿泊予定のホテルに到着しチェックインを済ませ、部屋に入った瞬間、
言葉では言い表せられない重い空気、何の変哲もない室内の絵画ですら気味が悪い感覚になり、誰もいないはずなのに何かいるような得体のしれない恐怖が私を襲いました。

「気のせいだ、多分明日の事で緊張しすぎて気分的に疲れてるんだろう」と自分に言い聞かせその日は早々に就寝。
しかし、外の明かりすら入って来ない真っ暗な部屋の中、私は寝ているベッドの左足もとに違和感を感じました。

…いる。キツネだ。

姿を見たわけでは無い、しかしながら自分の意識ははっきりと、それをキツネだと捉えていました。
ゆっくりと枕元へ近づいてくる…そう思ったら今度はすっと消え、何もいなかったように。

あれは夢だったのか…と妙な疲れを感じながらも目が覚め、何事も無かったかのように研修をこなし、自宅へ帰り、そしてまた何もない日が数日続きました。

ホテルでの一件があってから2週間ほど過ぎた日、普段通り仕事をし、就寝前はネットサーフィンを楽しみ、そろそろ寝ないと明日の仕事に響くなとベッドにもぐりこみました。

夢うつつの中、またあの感覚が…しかし今度は違う。自分の上に明らかにのしかかっている。

振り払おうにも両手両足は何者かに押さえつけられているかの如く、ずんとした重みでぴくりとも動かせない。
声を出そうにも恐怖でかすれ声も出せない。

ダメだ…これは明らかに敵意を持っているような感覚だ…

少しづつ私の体を這い上がってくるそれは、私の首を圧迫しだしました。

殺されるかもしれないと思った私は、無意識に自宅のすぐ近くにある神社の方向に向かって「たすけて!!」とすがるように心の中で叫びました。

その瞬間、あれだけ重かった手足が急に軽くなり、息苦しかった喉元には空気がすーっと取りこまれるのが分かりました。
ホテルの時のような不安な目覚めではなく、あきらかに「もう大丈夫だ」という不思議な安堵感がありました。
あらためて枕元の携帯を見ると深夜2時を少し過ぎた頃でした。

結局なぜあの時私が狙われ、そして逃げて行ったのか、あの時助けててくれたのが神様なのかはわかりませんが、それ以来自分が生まれ育った場所の氏神様を大切にしようという気持ちになり、今も初詣以外でも境内の公園に立ち寄る際には子供達と一緒にお参りするようにしています。

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