首吊り林
投稿者:煙巻 (8)
それと同時に、俺は気を失う前に見た首吊り集団のシルエットを探すように頭上を見渡す。
当然と言えば当然だが、そんなシルエットは何処にもない。
更に、俺のすぐ近くに落下したはずの首の長い女性も存在しない。
あれは事故で半首吊り状態となった俺が見た幻覚だったのだろうか?
だが、それ以前にも首吊り女性は四人が目撃している。
俺は三人に訊ねるように「あの首を吊ってた女は?」と口を開くと、三人は「知らん」「そこまで助かめる勇気ないわ」と思い思いに返答をする。
まあ、万が一本物の死体でも、あそこまで変わり果てた死体はそう何度も目にしたくはない。
俺も出来るならあの死体はもう見たくはない。
それから俺達は四人で静寂な雑木林を用心しながら脱出した。
俺のように足を滑らせて事故死したくないからとA達は苦笑しながら慎重になってたが、俺は「俺は死んでないぞ」とツッコんでおいた。
因みに、後日警察に言おうかどうか迷った結果、昼間に四人で同じ雑木林を散策して確認したんだけど、首吊り死体なんてのは見つからなかった。
まあ、正確な場所なんてわからないから見落としの可能性もあるかもしれないけど、そもそも本当に死体だったのかも怪しい所だ。
俺達は共に幽霊を見た可能性に投票し、結局雑木林で死体は見当たらないので交番には行ってない。
俺の体験に至っては今際の際の幻覚か夢かもしれないし、どうせ現物が無ければ誰も信じないだろう。
俺はこの体験を通して肝試しには一切行かなくなったが、たまにその時の体験を夢に見る事がある。
夢の中では俺はいつも満月の明かりが降り注ぐ夜の雑木林に立っていて、俺の頭上の木々には首を吊った集団が揺れているのだ。
そして、決まってその中の一つ、自分の自重で首が伸び切った女性が目の前に落下し、長い首を伸ばして俺の顔を覗き込んでこう言う。
『すみませーん』と。
あの女性は俺達に何を伝えようとしているのかは分からないが、もし幽霊なら早く成仏して欲しいものだ。
マジで何度か飛び起きたら漏らしてた事もあるし、心臓に悪すぎる。
面白かった!!