押すなよ、押すなよ！

30年位前に友人から聞いた話。

当時、友人は某自動車部品メーカーの独身寮に住んでいた。
ある週末の深夜、寮の仲間たち（Ａ、Ｂ）と暇つぶしにドライブへと出かけた。
車はハッチバック車で、運転していたのはＡ、助手席には友人、後部座席にはＢが座っていた。
山あいの道を走っていると、いきなり数人の男たちが車の前を横切った。
Ａはすかさず急ブレーキ。
「危ないな。何だ今のは？いきなり目の前を渡るかよ」
「それにしても、こんな時間に山の中で何をしてるんだ」
「キャンプ場でもあったっけ」

「いや、この辺にはないぞ」
「ちょっと外に出て様子を見に行こうか？」
一旦、路肩に停車をしてみんなでガヤガヤ話していると車が少しずつ動き出した。
友人「おい、Ａ、まだ行かなくていいぞ」」
Ａ「あれ？アクセルは踏んでないけど」
Ｂ「ギャー」
友人「どうした？」
Ｂ「後ろ、後ろ・・・」

友人とＡが後ろを見ると5～6人の男たちがリアガラスに両手を当てて車を押していた。