高架下トンネルの怪
投稿者:take (96)
友人のKから聞いた話です。
高校生の時は自転車通学していました。
通学路の途中に、小さな高架下トンネルがあります。
朝や昼間は人通りがありますが、夜になると、ほとんど人が通らなくなります。
ある日、帰りが夜の九時を過ぎて、十一月に入っていたので、あたりはもう暗くなっていました。
普段通り自転車を走らせていると、トンネルの中を人が歩いているのが見えました。
髪の長い女性で、秋だというのに薄手のワンピースのようなものを着ていて、左右にフラフラしており、『変な人だな』と思ったそうです。
トンネル入り口の手前で一旦停車して、よく見ると、髪はボサボサで、裸足であることがわかります。
やはり変な人か、と思いましたが、夜になるとタチの悪い連中がたむろすることもあったので、もしかしたら乱暴されて茫然自失なのかもしれない、と思い直しました。
Kは空手を小学生からやっており、その日も道場で練習をした帰りだったのです。
もし変な人でも、女性相手に不安はなかったし、事件に巻き込まれていたのなら、救助しないと、と思い、ゆっくりと女性に近づきました。
「どうかしましたか、大丈夫ですか?」と、声をかけましたが反応はありません。
そこでKは、自転車を降り、咄嗟の事態に対処できるように身構えつつ、女性の横に並び歩く形で、もう一度声をかけました。
突然、女性は体を前屈みにすると、下から見上げるような形でKに顔を近づけてきました。
女性の目はカッと見開かれ、やけに白目が目立っていました。そして鼻と口があるべきところはなにもなく、のっぺりとした青白い肌があるだけでした。
「うわッ」
思わず飛び退がると、女性が頷くように首を上下に細かく動かしながら近づいてきます。
「うおおおッ」
咄嗟に左右の正拳突きと回し蹴りの、得意のコンビネーション技を出したそうです。
が、なんの手応えもなく、ふっと女性の姿は消え失せました。
それから帰りが遅い時は回り道して帰るようになったといいます。
「ずっとそこを通っていたのに、そんなのに遭った事なかったんだぜ、何かに化かされたっていうのは、ああいうのを言うのかね」
Kは首を傾げて苦笑いしていました。
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