しくしく泣く人形

友達の家に遊びにいったときに、私はしくしく泣く声を耳にしました。

それは隣の部屋からのようで、ずっと気になっていたのです。

友達に聞いてみても、私のように声は聞こえないといいます。

子供だった私は調子に乗って、「誰が泣いているか探そう」と提案したのです。

友達はそれに乗ってくれました。

友達の部屋の隣は、どうやら友達のお姉ちゃんの部屋だったみたいです。

というのも、友達の姉は長い間病院で療養中でした。

何か重い病を患っているらしく、なかなか会えないと聞いていました。

そんなお姉ちゃんの部屋に誰かがいるわけもなく、部屋を開けてみたけどガランとして誰もいませんでした。

部屋を閉じようとしたのですが、奥から泣き声が微かに聞こえたのです。

「ちょっと待って」と私がいい、扉を閉めようとする友達を制止しました。

私が泣き声がする方に近づいていくと、何か木彫りの人形みたいなのが落ちているのを見つけたのです。

本当に気持ち悪い子供の体型っぽく掘ったものでした。

これは何かと友達に聞いたけど、分からないと言われました。

友達も気持ち悪いと言っていて、それで誰にも言わずにごみに捨てたのでした。

しばらくして、友達のお姉ちゃんが病で亡くなったと聞きました。

まだ小さいのに可哀そうにとそれを聞いた母は泣いていました。

その日の帰りにその友達と登下校していると、しくしくと聞いたことがある泣き声がしたのです。

不思議に思って耳を澄ますと友達のランドセルからでした。

そのことを指摘してみたら、友達がおもむろにランドセルの蓋を開けました。

そして中を見て友達が叫び声を上げたのです。

何かと思ったらランドセルから、あの日友達の姉の部屋で見つけた気味の悪い木彫りの人形が入っていました。

「捨てたんじゃなかったの？」と私が言うと、友達は「捨てたよ」と必死に訴えました。

とっさに友達がその人形を放り投げ、投げた人形は近くを流れる川に落ちました。

そのまま流れて行くのを二人で見ました。

今だからこそ思うのですが、あの人形はもしかしたら友達の姉の魂が入っていたのかもしれません。

ずっと泣いていたあの人形が今どこかで安らかに眠っていることを願います。